ダウンサイジングによる持続可能なシステムの確立71【参考文献】中央教育審議会『我が国の「知の総和」向上の未来像~高等教育システムの再構築~(答申)』2025.2.21(本文、要旨及び関係データ集を参照)日本私立学校振興・共済事業団『令和6(2024)年度私立大学・短期大学等入学志願動向』2024.9リクルート カレッジマネジメント244 │Apr. - Jun. 2025ません。閉じることも存続することもできない事態は避けなければなりません。自力での再建が難しく、法人合併や設置者変更等をしようとした場合に相手先を探すと、見つかるケースは少なくありませんが、しっかりとした学校運営を行えるかどうかは分りません。教育や学校運営に対する高い志、確かな将来構想と経営能力を持った相手と組むことが大切です。経営支援業務を行って強く感じることは危機感の希薄さです。コンサルティングを求めてくる大学の多くは単年度収支が成り立っていませんが、その段階に至っても漠然とした危機意識しか持っていないことが多いです。改革を実行する際には当然痛みを伴います。そこには、内部で軋轢や紛争も起きる可能性がありますが、それをも辞さない覚悟が必要です。しかし、同規模の大学の人件費平均と比べて高くないことを理由に思い切った人件費削減に踏み込めなかったり、教育・研究を言い訳的な理由にした業務の無駄が随所にあったりという状況も見られます。慣習的な委員会主導の意思決定により指示待ち傾向の職員も多く、教員も経営に対して建設的な提案ができず、総じて改革・改善に後ろ向きの姿勢が目立ちます。また、改革や再建を進めるうえで、法人と大学・学校の間の溝も大きな障壁となります。溝があると建設的な話し合いができず、どのようなプロジェクトも上手くいきません。この溝を埋めるのに大変な時間と労力を要することは特に指摘しておきたいと思います。(以上が木村氏のインタビュー要旨)ここまで私立大学を中心に述べてきたが、我が国の高等教育全体で、需要縮小に対応した供給削減は不可避との前提に立って、大学機能の高度化と持続可能なシステムの確立を進めていく必要がある。答申においても、国立・公立・私立の設置形態に拘わらず後の検討に委ねられているが、国立大学は人事院勧告を踏まえた人件費増や光熱・水道費をはじめとする物価上昇を賄いきれない状況が続いており、現場の閉塞感は増すばかりである。一方で、18歳人口減少下での運営費交付金の増額は、財政当局のみならず社会や国民の理解を容易には得られないだろう。国立大学は、我が国の研究力、学問分野の多様性、地域・社会の発展において主導的な役割を果たさなければならず、その期待はさらに高まるものと思われる。そのためにも教育研究基盤を劣化させることなく、さらに強固なものとするために、需要縮小を踏まえたダウンサイジング、さらには全国レベルでの統合再編による大学数削減も視野に入れなければならない。それらを通した持続可能でしなやかな国立大学システムの再構築が求められている。公立大学は、高等教育へのアクセス、地域ニーズに対応した多様な教育機会の提供、研究や医療を通した貢献等の面で重要な役割を果たしている。一方で、国立・私立との役割分担や連携、財政負担のあり方、大学運営を担う職員の育成等の課題も多い。設置団体と大学の関係も個別に見ていくと多様である。公立大学システムの将来的なあり方に関する議論も必要な段階にきているものと思われる。我が国にとって少子化は最大のリスクであり、既にその影響が様々な形で顕在化しつつある。とりわけ首都圏を除く地域の状況は深刻である。DXを推進しつつ社会・経済全体で生産性を高め、外国人労働者に質・量ともに重要な役割を担ってもらうためにも、大学はより開かれた存在として、地域や社会との協働を通してその機能を高めていかなければならない。答申は「18歳中心主義」からの転換を促すが、果たして今のままで大学はリカレント教育やリスキリング教育を担えるのだろうか。18歳人口が減少するから留学生や社会人で補おうと考えているとしたら、あまりに安易と言わざるを得ない。社会がそれらに何を求めているか、その期待に応えるために教育の内容や方法をどう見直し、その水準をどこまで引き上げれば良いか。大学の教育力と変革に向けた本気度が問われている。「規模の適正化」が謳われている。それぞれの具体化は今
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