リクルート進学総研所長リクルート『カレッジマネジメント』編集長 小林 浩編集長の視点昨年来、東京大学の授業料値上げを発端として、大学の学費が話題となっている。学費を考えるに当たって、大きく3つの視点から整理してみたい。1つは学費を「負担」する側の視点である。学費を負担する側の家庭の状況を見ると、名目賃金は上昇する一方、賃金上昇を上回る物価上昇が生じており、家庭の学費への負担感は高まっているようだ。大学進学率は約6割に達しており、これまで大学に行っていなかった層の大学進学者が増えていることも背景にあると思われる。本特集のリベルタス・コンサルティング 八田 誠氏のリポートから抜粋すると、夫婦と子ども二人、うち長子が大学生の世帯では消費支出のうち26.4%が教育関連支出(2019年全国家計構造調査)となっており、2022年度の独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の調査では、大学学部生(昼間部)の55%が奨学金を利用しているとのことである。その結果、2023年度の文部科学省の意識調査※1では、なんと6割が大学等の教育費が負担であり、少子化の要因となっていると回答している。2つ目の視点は学費を「決める」側の視点である。物価上28リクルート カレッジマネジメント245 │Jul. - Sep. 2025昇は、当然家庭だけではなく、大学にも及んでいる。光熱費等の諸費用の高騰、設備施設の老朽化への対応、人件費の上昇等をどのように吸収するかは、経営上の大きな課題である。コスト増を吸収できなければ、教育・研究の質に影響が出てしまう。企業であれば、需要と供給のバランスや市場競争力によって商品・サービスの価格は決まってくる。しかし、大学は「公器」としての役割があるため、コスト増を直接学費に反映することが難しい。加えて、国等からの補助金を得ていること、国立・公立・私立といった設置者において事情が異なることから、学費の算定根拠が一般家庭から見ると分かりづらい点もやっかいだ。私立大学は学納金が収入の約8割を占めており、学費の決定は大きな課題である。そこで3つ目の視点、学費の「支援」である。この支援の拡充による学費負担の軽減が、昨今の新たな動向を把握するポイントとなりそうである。まず、国による支援として、高等教育へのアクセス強化を目的とする修学支援制度が導入され、対象が拡充されている。次に、大学独自の奨学金である。これは、学費自体は必要コストを吸収して上昇Editor-in-chief’ Perspective少子化時代の学費負担、3つの視点から考える
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