カレッジマネジメント246号
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Fビレッジという未来への選択と、地域との誠実な対話未来への危機感が生んだ、理事会の「机上訓練」学校法人東日本学園理事長鈴木英二 氏事例「M&Aや公立大学への転換、そしてキャンパス移転。札幌市内等複数の候補地を検討のテーブルに載せ、あらゆる選択肢を本気でシミュレーションしたのです」 移転先として、なぜFビレッジだったのか。それは、単なる利便性の向上に留まらない、大学と地域の未来を共創するパートナーとしての魅力があったからだ。「Fビレッジは単なるボールパークではなく、一つの『まち』を創るという壮大な構想です。そのなかで教育・研究機関は重要な役割を担う。われわれの目指す方向性と完全に一致しました。また、新千歳空港と札幌駅のほぼ中間に位置し、2028年にはキャンパス直結の新駅も開業予定です。札幌まで15分で空港にも近いというアクセスは、学生募集はもちろん、国際化を推進する上でも計り知れない価値があります」 しかし、その決断で課題となったのが、50年にわたり大学と共に歩んできた当別町との関係だった。「当然、町からは移転を考え直してほしいという切実な声を頂きました。われわれが伝えたのは、短期的な視点ではなく、このまま当別に留まることが、長い目で見て本当に地域のためになるのか、という問いです。大学が活力を失えば、いずれご迷惑をおかけすることになる。誠意を持ってわれわれの考えを説明し、対話を重ねました」 札幌駅北海道ボールパークFビレッジ(新キャンパス予定地)新千歳空港2Case StudiesCASE北海道の医療を支える国内有数の医療系総合大学、北海道医療大学。薬学、歯学から看護、リハビリ、心理まで、「多職種連携教育」を通じて超高齢社会や高度化する医療の場で活躍する多様な専門職を育成している。1974年の開学から50年、現在は札幌近郊の当別町と札幌市あいの里にキャンパスを構えるが、2028年4月、その歴史に大きな一歩を刻む。全ての学部機能を、プロ野球・北海道日本ハムファイターズの本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」を中核とする「北海道ボールパークFビレッジ」(北広島市)に全面移転するのである。地方大学が抱える課題に対し、同大学はなぜ、未来を託す場所にFビレッジを選んだのか。その大胆な決断の背景にある緻密な戦略と、地域と共に描く未来像について、学校法人東日本学園の鈴木英二理事長に聞いた。「移転の検討を始めたのは3年ほど前。全ての議論の根底には、やはり18歳人口の減少という、避けては通れない未来がありました」鈴木理事長は、複合的な課題が移転検討の引き金になったと語る。「本学が位置する当別町は、冬になるとJRが運休することも珍しくありません。国家試験や卒業を控えた1~3月という最も大事な時期に学生が大学に来られなくなったり、札幌に帰れなくなったりする事態が起きていました。また、開学から50年が経過し施設の老朽化も深刻でした」 このままでは大学の魅力を維持し、社会の期待に応え続けることが困難になる。その強い危機感から、理事会で将来のあらゆる可能性を探る「机上訓練」を行ったという。16リクルート カレッジマネジメント246 │Oct. - Dec. 2025Fビレッジへの移転を通じて新たな「まち」と共に医療人を育む北海道医療大学

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