カレッジマネジメント246号
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tnemeganaMytiiI srevgnitavonnnUリクルート カレッジマネジメント246│Oct. - Dec. 2025学校法人東京家政学院理事長・筑波大学名誉教授財政制度等審議会が本年5月に取りまとめた「激動の世界を見据えたあるべき財政運営」(以下「建議」)が大学関係者の間で波紋を広げ、報道等を通して社会的にも関心を呼んでいる。建議は、Ⅲの1-2-(2)「大学教育の質の実態に応じた私学助成のメリハリ強化」の冒頭で次のように指摘する。「収容定員充足率だけで教育の質を判断できるわけではないとはいえ、定員割れとなっている私立大学の中には、義務・中等教育で学ぶような内容の授業が行われている大学も見受けられる。義務・中等教育において解決すべき課題も存在するものの、義務・中等教育で身につけた能力を基盤として社会の発展の原動力となる高い能力や技能を有する人材を育成するという高等教育の意義を再確認し、教育の質を確保・向上することが急務となっている」。その上で、私学助成について、「①高等教育にふさわしい教育を行っているか(教育の質の絶対基準)、②学生の学問的成長に寄与しているか(学生への付加価値基準)、③社会で求められる人材を育成しているか(教育分野・地域性基準)等の観点から、認証評価制度を活用しつつ、メリハリを強化していくべきではないか」と述べている。既にユニバーサル段階にあり、足元の大学進学率が約6割に達する我が国において、学生の意識・関心・学力等が多様化することは必然である。これに、初等・中等教育段階での学力の低下やいわゆる大学全入時代の到来という状況が38加わり、基礎学力や学習習慣を身につけないまま入学する学生が増加したことが、このような指摘の背景にある。注意すべきは、選抜性の高い大学であっても基礎学力が十分とはいえない学生は一定数いるということであり、選抜性が低いとされる大学であっても目的意識を持ち、学習意欲の高い学生がいるということである。その上で、建議が示す「高等教育にふさわしい教育」「学生の学問的成長」「社会で求められる人材」とは何か、その意味するものや本質を問い直す必要がある。それは単にこの建議に反論するためのものにとどまってはならず、各大学が自らの高等教育観や大学観を醸成し、独自の教育理念の確認または確立に繋がるものでなくてはならない。これにより、各大学が機関としての自己理解を深め、自己成長が促されることで、我が国全体において、個別性と多様性に富んだ高等教育の発展が期待できるのではなかろうか。そもそも、基礎学力や学習習慣が不十分なまま中等教育段階を終えて進学してきた学生に、大学が多くの教育資源を割くことをどのように考えるべきだろうか。このことに否定的な見解として、次のような視点が考えられる。1つめは、大学に期待される本来の役割からの乖離への懸念である。「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」という学校教育法の本旨を果たすことこそ大学の使命である。初等・中等自らの教育観や大学観を問い直す契機に大学教育の形骸化と教育責任の曖昧化への危惧大学を強くする「大学経営改革」 ~財政制度等審議会の建議を踏まえて~107「高等教育にふさわしい教育」とは何か吉武博通氏

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