カレッジマネジメント247号
10/59

出典:『世界標準の経営理論』( 入山章栄氏・著 )知の探索と知の深化のバランスがとれているとイノベーションにつながりやすい(薄い矢印)。入山氏は、これを指して左右両手を利き手として使える「両利きの経営」と称する。知の深化に偏るとコンピテンシー・トラップが起きる(濃い矢印)リクルート カレッジマネジメント247 │Jan. - Mar. 2026と比べて開業率が低いが、同時に廃業率も低い。これに対して、入山氏は、「もっと日本の会社はリスクを負ったほうがいい」と指摘する。「もちろん会社を倒産させるのは辛いことではありますが、私はそれ以上に“キャリアの倒産”のほうがはるかに大きな問題だと考えます。事業が失敗しても、またチャレンジすればいいんです。それなのに、日本では、倒産を取り返しのつかないもののように捉えてしまう傾向があります。だから、失敗を極度に恐れてしまう。しかし、一度や二度失敗したところで個人のキャリアは続きます。失敗を恐れず、むしろそれを糧にして、いかに自らのキャリアを自分軸で伸ばしていけるか。このような考え方を醸成し、浸透させていくことが、これからの日本には重要になりますね」さて、ここまで起業家を想定してアントレプレナーシップの議論を進めてきたが、アントレプレナーシップの定義は、広義にはその範囲にとどまらない。経済学者ジョセフ・シュンペーターは、この言葉を「イノベーションを起こす当事者」に必要とされる精神として定義している。当然、企業や組織に属しながらイノベーションを仕掛けるイントレプレナー(社内起業家)にもアントレプレナーシップは求められる。多くの企業で、成長のためのイノベーショ10ンが求められている今、アントレプレナーシップを自分とは無関係のものと言い切れる人はそう多くはないはずだ。「AI によって正解を出すことはできますが、イノベーションを起こすために人間に求められるのは、答えのない領域で失敗を恐れず挑戦すること。それが全てと言えます」「知の探索」と「知の深化」。この 2 つのバランスがイノベーションの要諦では、イノベーションの当事者に求められる力とはどのようなものなのか。入山氏は、「知の探索」「知の深化」というキーワードを使って次のように説明する(図 2、図 3)。「知の探索とは、現在の認知の範囲外に新しい知を求めること。知の深化とは、既存の知を深掘りしていくことです。シュンペーターは、イノベーションについて、『新しい知とは常に、“既存の知”と別の“既存の知”の“新しい組み合せ”で生まれる』と説明しています。しかし、人の認知の範囲には限界がある。だから知の探索が必要となります。しかし、それだけではビジネスになりません。それによって生まれた新しい知を深掘りすること(知の深化)で、収益化を図ることができるのです。つまり、知の探索と知の深図 2 イノベーションの理論:両利きの経営知の深化(Exploitation)コンピテンシー・トラップ知の探索(Exploration)

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る