カレッジマネジメント247号
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出典:『世界標準の経営理論』( 入山章栄氏・著 )リクルート カレッジマネジメント247 │Jan. - Mar. 2026知の探索には、極端に範囲を広げないほどほどの探索もあれば、遠くの知まで探索する広範な探索もあり、幅がある。広範な探索は新しいアイデアにダイレクトにつながる可能性があるが、技術的なブレークスルーを目指すには遠回りすぎる。図のようにほどほどの探索を経て到達した技術的ブレークスルーを価値を生み出すアイデアに結びつける方法もある。化を高いレベルでバランスよく実践できることが、イノベーションの当事者には求められるのです」知の探索は、ビジネスパーソンであれば、異なる部門を幅広く経験すること、全く違う業種への転職、越境学習などが当てはまるだろう。学生であれば、自分の専門外の領域について学ぶこと、自分とは異なる背景を持つ多様な人から新しい知を得ることなどが当てはまる。「ここで注意しなくてはいけないのは、多くの企業で実際に起きていることですが、不確実性が高くコストも高い知の探索をおろそかにして、人も組織も確実性が高くコストも低い知の深化に偏ってしまうことです。そうなると、中長期的にイノベーションは枯渇してしまう。これをコンピテンシー・トラップと言います。だから、知の探索と知の深化のバランスが大切なのです」アントレプレナーを養成する大学自体にアントレプレナーシップが求められるこのような人材を育成するために、今後、日本の教育に求められるものは何だろうか。入山氏は、まず重要になるのは、小中学生など若年層に向けた、失敗を恐れないマインドや、多様性を受け入れ、自分の認知の範囲を広げる行動力などを醸成する教育が重要になると指摘する。そのうえで、高等教育機関にもアントレプレナーシップ教育の主体として、社会的な役割を担うことが求められるという。「ただし、既存の大学教育は知の深化に偏りがちな面があります。学生に知の探索に必要な力も身につけさせるためには抜本的な改革が必要でしょう。そういった意味で、今、私が注目しているのは iU(情報経営イノベーション専門職大学)や武蔵野大学アントレプレナーシップ学部など。本気でアントレプレナーシップ教育に取り組むなら、既存の大学組織のしがらみのない、新設大学や新設学部こそがふさわしいのではないでしょうか」アントレプレナーシップ教育に取り組む大学自体にもアントレプレナーシップが求められるということだ。また、アントレプレナーシップは若い層だけではなく、全世代に求められる。そこで重要になるのが、MBA(ビジネススクール)など社会人を対象とした大学院だ。日本のビジネスの古い価値観や慣習から脱却し、アントレプレナーシップを養うための教育に力を入れていくことが今後より重要になってくると、入山氏は大学への期待を語る。(文/伊藤 敬太郎)11図 3 イノベーションの成果知の探索ほどほどの探索広範な探索技術的なブレークスルーのアイデア価値を生み出すアイデア特集 1 アントレプレナーシップ教育の現状と課題

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