カレッジマネジメント247号
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(1) 概念の混乱とそれによる教育内容の混乱まず、アントレプレナーシップという概念は世界的にも多義的かつ曖昧であり、日本では翻訳過程でその混乱がさらに増している。アントレプレナーシップは起業家精神と訳されることが多いが、英語では entrepreneurship と書かれ、リーダーシップ等と同じ “〜 ship” の語が示す通り、教え・練習し・観察して評価しうる資質・技能を含む概念である。ところが、起業家「精神」という訳語に引き寄せられ、教育できないと誤解されたり、知識やスキルが軽視されたりする。そのため、アントレプレナーシップを「起業家性」として訳す提案がなされている(1) 。また、広義と狭義のアントレプレナーシップの混同も散見される。Lackéus(2015) (2)では、アントレプレナーシップを広義と狭義に分けて議論することが提案されている。狭義のアントレプレナーシップは個人がビジネスを創出する能力を指し、広義のアントレプレナーシップは個人日本のアントレプレナーシップ教育の現状と課題リクルート カレッジマネジメント247 │Jan. - Mar. 2026東京大学 FoundX ディレクター日本マイクロソフトを経て、2016 年から東京大学。東京大学では本郷テックガレージの立ち上げと運営を行い、2019 年から FoundX ディレクターとしてスタートアップの支援とアントレプレナーシップ教育に従事する。スタートアップ向けのスライド、ブログ等で情報提供を行っている。著書に『逆説のスタートアップ思考』『成功する起業家は居場所を選ぶ』『未来を実装する』『解像度を上げる』。東京大学 FoundX プログラムマネジャー東京大学大学院修了後、企業内研修の法人営業に従事。2019 年から東京大学 FoundX にてスタートアップ支援及びアントレプレナーシップ教育に携わる。2023 年度から東京大学大学院新領域創成科学研究科の博士課程に在籍。国家資格キャリアコンサルタント。世界的にアントレプレナーシップ教育(以下、文字数の関係で「アントレ教育」と略す)が注目され、日本でも急速に広がりつつある一方、教育現場では次のような課題が起こっている。• アントレ教育の授業設計をどうすればよいか分からない• アントレ教育の授業をどう改善すればよいか分からないこれらの背後には、(1) 概念の混乱とそれによる教育内容の混乱、(2) 不明瞭な授業の目標、 (3) 授業改善の指針の不足、といった複数の課題が隠れている。12C o n t r i b u t i o n 寄 稿日本のアントレプレナーシップ教育をどう設計するか馬田隆明冨田佳奈

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