51リクルート カレッジマネジメント247│Jan. - Mar. 2026い」との審議まとめの考えを成果に結びつけるためにも、新たな視点から改革のあり方を問い直す必要がある。その視点こそ「学部」である。教育、研究、社会貢献の機能を最大化するために学部をいかに変革すべきかを検討し、実効ある運営を確立していかなければならない。教育社会学者で 1974 年から 76 年まで文部大臣を務めた永井道夫は、その著書『大学の可能性』( 中央公論、1969という。しかし、その立場をとることによって、よりすぐれた管理運営を行うことができるのか。これに対して大学側は明確な答えを示していません」と述べている。半世紀以上を経た今日において、大学は永井の問いにどう答えるのだろうか。まず行うべきは、2014 年の審議まとめや 15 年の学校教育法改正の趣旨に則ったガバナンスの仕組みを徹底することである。学長と学部の間の責任・権限関係を明確化し、そのことを広く構成員に理解させる必要がある。学部やその構成員の意見を聴くことはマネジメントの問題として重視されなければならないが、責任・権限関係や意思決定の仕組みなどガバナンス上の課題とは峻別する必要がある。また、学部の教育研究に対して責任を負う立場にあり、学部教員の代表者である学部長の専決事項と学部教授会で審議・決定すべき事項の明確化も必要である。ユニバーサル段階にある大学において、多様化する学生に対するきめ細かな対応がこれまでにも増して求められている。教育の質が問われ、わが国全体の研究力の低下が指摘されるなか、教員が教育研究活動に専念できる環境の整備も不可欠である。課題解決の速度を上げ、管理運営に係る負担を軽減するためにも、学部運営を根本的に見直していく必要がある。さらに大きな課題は、学部機能を社会的要請や学問の動向に即して持続的に向上させることである。そのためには、教員の採用、個々の教育研究能力向上の促進、教員間や教となる。学長が改革の方針を定めても、全学的に教学マネジメントの仕組みを整えたとしても、実際に教育研究活動を担うのは学部であり、そこに所属する教員である。大学改革の成否は学部の変革にかかっているといって過言ではない。学部長にはその変革を主導する意思と能力が求められている。ここで留意しなければならないことは、学部は一様ではないという点である。例えば、国立大学の場合、旧制高校、師範学校、専門学校、医科大学などの学校を包括する形で一つの大学が設置され、改組や学部新設などを経て今日に至るケースが少なくない。そのために学部ごとにキャンパスが異なり、遠隔地にあることも多い。大規模な私立大学では、中小規模の大学一校に匹敵する学生定員や予算額を有し、本部や他学部と離れた場所に立地するケースもある。このような学部に対しては、より大きな責任と権限を付与し、自律的な運営に委ねたほうが良い場合もあり得る。また、大学院重点化により、教員の所属を含めて大学院研究科を部局として運営している大学も、国立大学を中心に多い。学長を中心とする大学執行部と学部の関係、学部運営のあり方などを考えるにあたり、これらの実情を十分に踏まえる必要がある。もう一つ留意すべきは、自主的な変革に取り組んだり、優れた学部運営を実践したりしている学部も決して少なくないという点である。国や社会は、ともすると大学自身の努力や工夫に目を向けることなく、変革されなければならない存在として大学に改革を迫りがちである。同じことは学内における大学執行部と学部の関係にもあり、変革に後ろ向き、または抵抗する存在として、学部を捉えがちな面がある。国公私立大学の経営や評価に携わってきた筆者の経験の域を出ないが、同じ大学においても学部間で課題認識の共有の度合い、改革方針の明確さ、組織としてのまとまりなどに関して、かなりの差やばらつきがあることを感じている。年 ) で「大学は“教授会の自治”を守り、権力の介入を排する員・職員間の協働による組織的な教育の展開が重要な要素大学改革の成否は学部の変革にかかっている学部は一様ではなく自主的な変革の尊重も必要
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