カレッジマネジメント247号
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53【参考文献】吉武博通「大学における戦略の創出と実行について考える」『カレッジマネジメント』No.231,Jan.–Mar.2022リクルート カレッジマネジメント247│Jan. - Mar. 2026キャンパスの立地にもよるが、これらのスタッフを全て学部に所属させる必要はない。例えば、IR や URA など高度な専門性を必要とするスタッフについては、本部や全学組織に一元化したうえで、担当する学部を明確にし、学部にも席を設けるなどして学部長を支える方法が考えられる。これらのスタッフの人事評価に、学部長の評価を加味することで実効性を担保することもできる。副学部長、学部長補佐、高度専門職、企画・教学系スタッフなどで構成される戦略チームを編成し、学部長と学科長の率直な対話の場を設けることで、戦略的な学部運営の基盤もさらに強固なものになるだろう。大切なことは、このような学部運営システムの整備に学長や大学執行部がコミットし、支援することである。これらを通して、学部との信頼関係も高まるはずである。学部長の役割を調整型から戦略遂行型に転換させるに当たり、学部長の選任と学部を率いるにふさわしい人材の育成は極めて重要な課題である。学部長については、学部教授会における投票によって選出され、理事長または学長が任命するケースが依然として多いと思われる。このほかに、学部教授会が複数名の候補者を選出して理事長または学長が決定、学部長選考会議による選出、学長による指名などの方式がある。それぞれに長短はあり、どの方式が優れていると言い切れるものでもないが、学部運営の巧拙が大学経営に影響を与える以上、経営に最終責任を負う理事会における審議や理事長による任命は極めて重いと考えるべきであろう。そして、何よりも重要なことは、法人や大学として学部長に何を期待するか、その役割と求める人材要件を明確にすることである。持ち回りのポストといった認識で学部長を選ぶことは許されない。仮にそのような意識が残っているとすれば、自大学やわが国の高等教育が置かれた状況に対する危機感があまりに薄いといわざるを得ない。2年任期の大学が多いと思われるが、計画した施策を実施し、軌道に乗せるまでの2期4年や3期6年は一人の学部長が務める形が望まれる。学部長人材を計画的に育成するという発想もますます重要になってくる。前述の通り副学部長や学部長補佐は将来の学部長任命を睨んだキャリアパスになり得る。学長による学長補佐等への登用を通して、全学的視点から大学運営を学ぶ機会を与えることも有効である。既にこのような取り組みを行っている大学も多いだろうが、学部運営を担う人材育成の機会として、これらのポジションをより積極的に活用していく必要がある。学部長職務を担うための知識やスキルを身につけるとともに、これからの学部運営を主導するにふさわしいマインドセットを養うための体系的な教育プログラムの開発も重要である。海外では、教育や学術の分野で主導的な役割を果たすためのリーダーシッププログラムを設ける大学や学会もある。わが国においては、トップ向けのセミナー、職員を対象とする研修などが大学団体等により行われているが、学部長や将来の学部長候補人材を対象にした教育機会はあまり見当たらず、実施されていたとしても広く知られているわけではない。「選挙で選ばれる学部長を予め育成することなど現実的ではない」との見方もあるだろう。しかしながら、仮に選挙で選ばれたとしても4月の就任までに時間はある。この期間に必要最小限であったとしても学修機会を設けるだけで、学部長職務の円滑なスタートの後押しになるし、その後の能力開発にもつながるだろう。ここまで学部長に焦点を当てて論じてきたが、研究グループを率いるPI(Principal Investigator)、さらには学科長など、研究活動や教育活動を主導し、それらを組織的に展開する能力を養うことは、個々の大学のみならず、わが国の高等教育や学術研究の水準を持続的に向上させるために必須の課題である。学長主導だけでは大学は変わらない。より良い教育研究現場をつくりあげていくために何が必要か。本稿がそれを考える契機となることを期待したい。学部長に期待する役割と求める要件の明確化学部長人材の育成こそ大学の未来を拓く鍵

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