864209リクルート カレッジマネジメント247 │Jan. - Mar. 2026社会構造の変革や教育によってアントレプレナーシップの養成は可能では、なぜ日本ではスタートアップが生まれにくいのか。入山氏は、その大きな要因は、日本企業に長年浸透してきた終身雇用制度にあると指摘する。「失われた 30 年」を経て、終身雇用は崩壊したと言われることも多くなってきたが、そんな今でも、就社信仰は決してなくなってはいない。「終身雇用への幻想があるために、日本には、大企業に勤めて管理職になることがエリートコースであるという考え方がまだまだ根強いです。しかし、米国などでは、今では自らビジネスを起こすことこそがエリートコースだと考えられています。日本でも、例えば、東京大学などでは、スタートアップを志す学生は多くなっていますが、地方の大学に目を向けると必ずしもそうではない。そもそも起業を志す学生や起業家が周りにいないし、保護者も反対しますよね。その結果、優秀な学生も、志望するのは都道府県庁、地元の地銀ということになってしまっています。結局、そういったメンタリティはピア効果によるところが大きい。当然ながら、東京の大学でだけアントレプレナーが増えればいいというものではありません。先ほども言っ12.19.29.1(%)1614.214129.9109.47.15.2日本米国ドイツフランス11.9英国5.1注:企業の開廃業率の算出方法は、国によって異なるため、国際比較するには注意が必要である。また、科学技術指標 2021 とは数値が異なるので注意されたい。(年)出典:中小企業庁、「中小企業白書」たようにスタートアップの数を圧倒的に増やしていくためには、全国の大学で、終身雇用を前提とした安定志向を払拭していくことが必要になるでしょう」なお、日本人にアントレプレナーが少ないのは、遺伝的な要因が大きいとする考え方もある。しかし、入山氏は別の視点を提示する。「例えば、日本人をはじめとするアジア人は、不安を和らげる効果を持つ神経伝達物質セロトニン運搬体の働きが弱いから、そもそも民族として起業には向かないという説もあります。しかし、一方で違った考え方もできないでしょうか。明治時代に社会変革を担った志士も、昭和の高度成長を牽引したソニーなどのベンチャー企業をゼロから立ち上げた経営者もみんな日本人なのですから。もちろん遺伝的要素がゼロだとは言いませんが、現状の起業の少なさは時代背景的な要因のほうがはるかに大きいと考えます。だから社会構造の変革や教育によってこうしたマインドを変えることは十分可能なのです」会社が倒産することより恐ろしいのは個人の身に起きる「キャリアの倒産」もうひとつ、日本で起業家が育ちにくい要因となっているのが「失敗」への不寛容さだ。前出の通り、日本は諸外国図 1 主要国における開廃業率の推移(A) 開業率201620172015201820192020特集 1 アントレプレナーシップ教育の現状と課題
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