高校生の保護者のためのキャリアガイダンス2015
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 スマホ連携文具の先駆けとなったキングジムの『ショットノート』。この大ヒット商品を生み出したのは、遠藤慎さんら若手社員が集まった自主的な商品開発ミーティングでした。「仲間内では〝お茶会〞と呼んでいます。空いた時間に有志のメンバーが集合して新しい商品のアイデアを出し合っています」(遠藤さん) お茶会を始めたのは入社3年目。会社は既存商品で安定的な業績を上げており、若手に斬新な発想を求めるムードは希薄な時期でした。「新しいものを作りたいという思いと、このまま与えられた仕事だけしていたのではこの会社でしか通用しない人間になってしまうという焦りがあったんです。そんな話を後輩としていて、だったら自分たちで勝手にやっちゃおうと」(遠藤さん) 実は『ショットノート』、最初の提案ではボツに。「一度や二度の失敗であきらめないことは大事ですね。上司にはいつも『しつこい!』と怒られています(笑)」(遠藤さん) クリエイターとしての原点は高校時代。当時は趣味のプログラミングや作曲などに熱中していました。 何かを作ることのおもしろさにハマった遠藤さんは、大学ではプロダクトデザインを専攻。そこでの気づきが遠藤さんの〝ものづくりの世界〞を一気に広げました。 「高校までは自己満足の世界。しかし、プロダクトデザインを学んで、使う人のことを考えてものを作ることの重要性を知りました。ものづくりに大切なのは〝思いやり〞。視野が広がりましたね」(遠藤さん) このスタンスは社会人の今も変わらず、遠藤さんの〝自走〞を支えています。また、大学時代には、毎週課される発表を通してプレゼン力が鍛えられ、卒業アルバムの企画・制作などを通して仲間をまとめあげるリーダーシップを磨きました。さらに高校時代から続けてきた数多くのものづくりは失敗してもメゲない力を培いました。好きなことに打ち込んだ結果身についたこれらの力はすべて今の仕事に生きています。 「高校・大学時代、何かに夢中になるのは大切だと思います」。夢中になることが若者を成長させる││遠藤さんの姿がそれを証明しています。何のために働くか。常に社会貢献を意識しているからこそ、自分の価値観に基づいて〝自走〞できるのです。「もう一つ私に自慢できる力があるとすれば向上心。昨日よりも今日、今日よりも明日が少しでも良くな手書きのメモなどをスマートフォンのカメラで撮影し、画像データ化して管理するスマホ連携文具。メモ、ノート、ルーズリーフ、ホワイトボードなどのラインナップがあり、無料の専用スマホアプリを組み合わせて使用する。ノート類には各ページの四隅にマーカーがあり、アプリを起動して撮影する際にマーカーを認識すると、斜めに撮影しても自動で補正され、画面ぴったりにメモ画像が保存できる。2011年に発売され、シリーズの累計販売冊数は昨秋の段階で300万冊を超すヒットに『ショットノート』(キングジム)(株)キングジム 開発本部商品開発部開発四課リーダー。『ショットノート』の開発者。宮城県工業高校、東北工業大学工学部工業意匠学科卒(大学の学部・学科名は当時。現在はライフデザイン学部クリエイティブデザイン学科)。新卒でキングジムに入社し、文房具の企画・開発・デザインに携わるShin Endo遠藤さんが“自走”する力を身につけていったプロセス小学校時代家庭科や図工の課題などで変わった作品を作るのが好きだった。エンジニアの父親に作品を見せると喜んでくれるのがうれしかった。高校時代学校の勉強には身が入らず、部活では吹奏楽、趣味ではロックバンド(ドラム)、コンピュータプログラム、小説の執筆などに幅広く熱中。大学受験“身近なもの”を作ることに興味があり、プロダクトデザインが学べる学科にAO入試で進学。大学時代授業の課題、趣味を問わずものづくりに没頭。授業では毎週プレゼンがあり、必然的に伝える力が鍛えられた。その傍ら、釣りサークルを作るなど精力的に活動。大学卒業前自分で企画し、仲間を集めて学科の卒業アルバムを制作。みんなに喜ばれ、大きな成功体験になった。就職文具メーカーのキングジムに就職。入社3~4年目新しいものを作りたいと、後輩とともに自主的な商品開発ミーティングを始め、ヒット商品を生み出す。入社5年目自主ミーティングから生まれた『ショットノート』が商品化。毎日何かを作っていた高校・大学時代るようにと努力しています」 その繰り返しは、自分の頭で考え、行動する力を鍛えていきます。「高校生でも今日からできること。ぜひ実践してみてください」。上野さんが後輩たちに贈るメッセージです。27

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