高校生の保護者のためのキャリアガイダンス2016
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for Parent 2016女性の自律を育んできた先駆者135年の歴史を繋ぐキャリア教育東京家政大学/東京家政大学短期大学部 Tokyo Kasei University女性の自律を育んできた135年の歴史世界経済フォーラム(WEF)は、毎年男女平等指数ランキングを発表している。2015年に発表されたランキングで、日本は145カ国中101位。これは先進国の中できわめて低いランクだ。(グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2015※)。それでも日本はこうした現状を変えるべく、ようやく本腰を入れて動こうとしている。女性が活躍できる社会を実現することを日本の成長戦略の柱とし、「女性が輝く日本」の実現に向けてさまざまな政策が実行されようとしている。長く女性の地位が向上しないままに来てしまっている日本社会だが、その中でいちはやく女性の自律を唱え、女子教育を積極的に行ってきたのが東京家政大学だ。その歴史は1881年(明治14年)にまで遡る。校祖渡邉辰五郎氏が、東京家政大学の前身である「和洋裁縫伝習所」を創立した当時は、女子の就学率は男子の半分にも満たず、女性に学問は不要と考えられていた時代。しかし、平均寿命が40歳を欠けるという時代にあって、夫を戦争や病気で失うと、とたんに生活は困窮した。そんな社会情勢の中で、手に職を持ち、誰かに頼り切ることなく、必要が生じたときには自分で決断し道を選択できるということは、この時代を生きる女性にとって大きな意味を持っていたのである。そしてこの考え方こそ、現代まで受け継がれている同大学の建学の精神である「自主自律」にほかならない。志を受け継ぎ、卒業生が100校以上の学校を創設さらに渡邉氏が教育者として偉大だったのは、裁縫という自ら生計を立てられる技術を身につけることだけに留まらず、読み・書き・算術などの教養教育を併せて行うことで「指導者の育成」に尽力したことだろう。こうした渡邉氏の志を受け継ぎ女性が自律することの大切さを学んだ卒業生たちは、「自主自律」の精神を一人でも多くの人に伝えようと次々と全国に学校を立ち上げた。その数は実に100校以上。渡邉氏が掲げた『自律して生きる女性の育成』は、まさに女性のキャリア教育の先駆けであった。同大学の卒業生でもある学長の川合貞子氏は「キャリアというのは明治に誕生し、いち早く女性のキャリア教育に取り組んできた東京家政大学。その「自主自律」の精神を受け継いだ卒業生たちは、次の世代を育てるべく次々と学校を設立していった。その志の原点を紹介する。取材・文/今野雅晴36※出典:「The Global Gender Gap Report 2015」(WEF: World Economic Forum)椙山正弌(明治38卒)・椙山今(明治36卒)現・椙山女学園大学創設日露戦争(〜1905年)日本女子大学開学東京女医学校(女子医大)、女子英語学校(津田塾)、女子美術学校開学「裁縫掛け図」による一斉授業『普通裁縫教授書』著全国の女子師範学校・女学校の教科書となる教員養成会開設「東京裁縫女学校」に改称渡邉辰五郎氏ら34名が伝習所内に「共立女子職業学校」(現・共立女子大学)を創設小学校尋常科4年が義務教育となる「和洋裁縫伝習所」を本郷湯島に設立『普通裁縫算術書』著裁縫教授にあたり雛形尺、袖方、褄方を考案日清戦争(〜1895年)大日本女学会の通信教育で、全国の4万人が渡邉辰五郎氏の裁縫を受講これが現在の「家庭科」のもとになる家庭婦人の教養教育を目指す裁縫教授法・家政・国語・算術・教育を開講東京家政大学の    歴史

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