高校生の保護者のためのキャリアガイダンス2017
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自立心を育てる親子コミュニケーションのススメ「能動的な聞き方」の例Special Messageゴードンメソッド「親業」を用いたコミュニケーションのコツについて、保護者や教師、企業などを対象に講師活動を行っている。ゴードン・メソッドの各種講座を提供する親業訓練協会では企画室主任。著書に『あっ、こう言えばいいのか!ゴードン博士の親になるための16の方法: 家族をつなぐコミュニケーション』 など多数。CAP(子どもへの暴力防止プログラム)スペシャリスト、日本アンガーマネジメント協会ファシリテーターの資格ももつ。2女1男の母。※「親業」って何?■その「問題」は誰のもの? もしお子さんが「勉強したくないな」とこぼしたら、皆さんはどう返しますか。「なぜやりたくないの? 授業についていけないの?」と質問攻めしたり、「もう高校生なんだから、やりたくなくてもやるべきでしょう」と説教したり、「文句言っていないでちゃんとやりなさい」と指示したりしていませんか。 「親業」では、悩みや問題は本人に所有権があるという「問題所有の原則」を大事にしています。愛情があるからこそ、子どもを悩みや困難から救助してあげたくなるのですが、そこで問題を所有していない者が解決策を押し付けると、反発や抵抗を生むだけでなく、自立心や自尊心を奪いかねません。保護者にできるのは、「救助」ではなく「援助」でしょう。■まず子どもの話を聞く では、どう「援助」するか。それには、まず困っているという子どものサインをキャッチする必要があります。そのための話の聞き方について、親業では2種類を紹介しています。 1つは「受動的な聞き方」といって、保護者の意見は言わず、「うんうん」「なるほど」と相槌をうつ程度にする方法。もう1つは「能動的な聞き方」といって、相手が言ったことをそのまま繰り返したり、言い換えをしたり、その発言を裏付ける気持ちを確認したりする方法(上図)。子どもの言葉に耳を傾けることに徹すれば、子どもは本音を話しやすくなりますし、自分で考えたり問題解決していこうとするでしょう。 また、会話だけでなく、日常の表情や態度からもサインはキャッチできます。毎日相手の顔を見てあいさつする習慣を大切にすることをお勧めします。■「わたしメッセージ」で伝える 一方、「子どもが学校の手紙をちゃんと出さない」などで困っているのが保護者なら、問題の所有者は保護者になります。その場合は、「わたし」を主語にして困っている状況を伝えましょう。 「いつもだらしないんだから!」と子どもを非難、批判するのではなく、「大事な保護者会のお知らせを見るのが遅くなると、仕事の調整が大変で困るのよ」という具合に、事実を指摘するのです。これを親業では「わたしメッセージ」と呼びます。「相手の行動・事実」「私が受ける影響」「私の正直な感情」の3つの要素で構成するのがポイントです。■親から変わろう 私が親業と出合ったのは今から約20年前。娘が成人したころです。わが家はステップファミリー(再婚家庭)で、私は初婚でいきなり娘2人の母親になりました。よい母親になりたいと頑張ったはずが、娘は思春期になるにつれ反抗的な態度を取るようになり、親子関係はどんどん悪化していきました。 そんなある時、書店で親業の書籍を発見。娘への言葉は「あなたが悪い」という「あなたメッセージ」だったんだと目から鱗が落ち、講座を受講することに。その後、「つらい思いをさせてしまってごめんね」と娘に謝ることができ、今ではお互いを認め合える家族になりました。「親が変われば、子どもは変わる」は本当だったのです。 お子さんの高校入学は、かかわり方を見直すのによいタイミングではないでしょうか。高校生ぐらいになると、「人にあれこれ言うけれど自分はどうなの?」と保護者への見方もシビアになるもの。子どもの問題よりも、自分がどう生きるかの問題にシフトチェンジしたほうが、いい関係が築けるかもしれませんね。自立支援者として子どもにどう接するとよいか、「親業」メソッド(※)を伝えるインストラクターにインタビュー。子どもとの会話に、今日から取り入れられるポイントも教えていただきました。あ~あ、勉強したくないな①繰り返す「勉強したくないのね」②言い換える「勉強のやる気が出ないのね」③気持ちをくむ「気分がのらないみたいだね」親業シニアインストラクター瀬川文子先生カウンセリング、学習・発達心理学、教育学など、いわゆる行動科学の研究成果を基礎に、米国の臨床心理学者トマス・ゴードン博士が開発したコミュニケーションプログラム。「相手の気持ちを受け止める聞き方」「私の気持ちを上手に伝える語り方」「対立を解決する方法」について、ロールプレイ(役割演技)を交えた講座が全国で開催されている。11for Parent 2017
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