高校生の保護者のためのキャリアガイダンス2017
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小テストやレポートなどの中間課題が出される020406080100(%)グループワークなど学生が参加する機会がある理解がしやすいように教え方が工夫されているTA※などによる補助的な指導がある適切なコメントが付されて課題などの提出物が返却される■ 2007年度 CRUMP調査■ 2014年度 NIER調査88.288.864.374.938.061.233.841.625.936.7改革」が元々、大学側の危機感から発しているからです。「日本の大学はこのままではいけない」という危機感から 今の大学入試改革は、よく新聞記事などで「(安倍晋三首相の肝いりで設置された)教育再生実行会議の提言を受けて…」と説明されることが多いのですが、実は、先の中教審に高大接続改革が諮問されたのは12年8月。まだ民主党政権の時です。つまり、政権の思惑を超えて改革が必要だ、という認識の表れだと言えます。しかも、言いだしたのは大学側でした。 中教審で大学教育(学士課程教育)の在り方を検討していた大学分科会では、前慶應義塾長の安西祐一郎分科会長(後に中教審会長も歴任)を中心に、「日本の大学はこのままではいけない」という危機感を募らせていました。国内では企業から、海外では世界大学ランキングの、厳しい評価にさらされていたからです。海外の大学と激しい研究競争を繰り広げているトップクラスの大学ほど、危機感は強いものでした。ましてや18歳人口が再び本格的な減少期に入る「2018年問題」を控えて、各大学は生き残りに必死です。 アクティブ・ラーニング(大学教育界では「能動的学修」と訳す)の導入が提言されたのも、先の諮問と同日の中教審総会でまとまった「大学教育の質的転換」答申の中でした。これからの大学教育は、ただバラバラな教養・専門科目の単位を積み上げて卒業させれば済む時代ではない。日々の授業を通して専門的な知識にとどまらず、コミュニケーション能力や課題発見・解決能力といった「汎用的能力」も同時に身に付けさせて、社会に出てからも活躍できる人材を、4年間の計画的な教育でしっかりと育てなければならない――という問題意識です。 大学教育を変えるためには、学生を送り出す高校の教育も変えてもらわなければならない。それには、「入試が変わらないと高校教育も変わらない」と言われる大学入試も、セットで改革する必要がある――というのが、「高大接続改革」の発想でした。 中教審高大接続特別部会や「高大接続改革システム会議」の委員も歴任したリクルート進学総研の小林浩所長は「これからは『入学の国』から『卒業の国』にならなければなりません」と指摘します。 各大学は、既に動き始めています。図表1にある通り、最近は丁寧な教育を行う大学が増えており、特に「グループワークなど学生が参加する機会がある」という回答が大幅に増加しています。 小林所長は、注目する大学として、京都大学・東北大学・九州大学など旧帝大や、早稲田大学・上智大学・関西学院大学といった有名私大はもとより、岡山大学、島根大学、鹿児島大学などの地方国立大、国際基督教大学、追手門学院大学、金沢工業大学など「知る人ぞ知る」大学名を列挙しますが、より多くの大学が動き始めていることは間違いありません。 文科省は昨年度、国公私立を問わず全大学に「三つの方針」策定を義務付けました(図表2)。卒業、教育、そして入学者受け入れの方針を明らかにし、今年度以降、公表しなければならない、というものです。これによって大学教育改革は、さらに加速化することが必至です。 「10年後には大学の序列が変わっているかもしれません。少なくとも、『うちの大学ではこういう人材を育てる』という個性が明らかになっていることでしょう」(小林所長)高校の授業も「黙って聞いて丸暗記」の時代は終わった 高校の改革も今後、急ピッチで進※TA=ティーチング・アシスタント資料出所:国立教育政策研究所(NIER)「大学生の学習実態に関する調査研究」2014年/東京大学大学経営・政策研究センター(CRUMP)「全国大学生調査」2007年国公私立大学昼間部の大学生対象調査大学の授業は今?「よくあった」、「ある程度あった」と回答した者の比率図表1 大学の授業の内容・方法等の改善状況28for Parent 2017

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