高校生の保護者のためのキャリアガイダンス2017
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for Parent 2017まずは「やってみる」。地域や社会の現場で学生を育てる新しい学びの形千葉商科大学 Chiba University of Commerce地方の活性化に「よそ者」の学生が挑む『愛〝ひろ〞がり〝さき〞ほこる 弘前ウエディング』。これは人間社会学部のプロジェクトがつくり出した、青森県弘前市のための地域活性化プランである。「選ばれた恋」というロマンチックな花言葉がある名産のリンゴ、そして400年以上の歴史をもつ弘前城。この2つの地域資源を活かし、弘前で結婚式を挙げれば、固く長く続く夫婦の絆を結ぶことができるのではないか―。そんな学生の発想から生まれたものだった。かねて通年型観光の確立や知名度の向上といった地域課題を抱えていた弘前市から、「学生の若い感性で町おこしができないか」と相談を受けた朝比奈剛教授は、毎年現地に学生を連れてフィールドワークを実施。人間社会学部開設以降は「地域プロデューサー養成プロジェクトin弘前」と銘打ち、弘前の概要や観光の役割などを学内で事前学習をした上で現地に赴いた。自転車で市内を巡り、リンゴの収穫や農家民泊を体験し、地域の人々と交流を重ね、町おこし企画を市に提案している。「これからの地方は、新しい発想で新しい産業を興していく必要があります。よく言われる〝よそ者、若者〞ではありませんが、地域の人間ではない若い学生の視点や考え方は、地域活性化にうまく活かせると思うのです」。プロジェクトを率いる朝比奈教授は、学生を見守り励ます一方で、彼らの行動力や瑞々しい感性、ユニークな発想にいつも驚かされていると言う。現場で体験したからこそ生まれる学びの説得力2015年には観光庁や文部科学省等が後援する「大学生観光まちづくりコンテスト」への参加を視野に入れ、入念な事前調査をしてプロジェクトに臨んだ。それでも資料だけでは知り得ない情報は多く、地元の人さえ気づいていない魅力や、隠れた課題を対話や実体験から見出し、プランに落とし込んでいった。「こうしたアクティブラーニングには、現場がもつ『説得力』があります。講義や文献で何となく理解したことよりも、現場に行って実際に動き回り、直接見て聞いて体験したことの方がずっと学生の心に刺さってくるのでしょう」と朝比奈教授。大学へ戻り、地元の人々からのア社会で役立つ実学教育を続けてきた千葉商科大学。その中でも、企業や地域と連携したアクティブラーニングのプロジェクトを次々と成功させているのが人間社会学部である。「現場で育てる」という新しい学び方に迫る。取材・文/草苅敦子34(右上)弘前市でのフィールドワークは2泊3日で実施。リンゴの収穫や農家との交流を通じて、農業や地方が抱える課題にも理解を深めていった。(右下)観光名所や街なかへ実際に足を運ぶことで、さまざまなアイデアが生まれていく。厳しい気候の中、400年を超える歴史と崩れたことのない石垣をもつ弘前城のストーリーは、結婚式のアイデアを膨らませるきっかけに。(左下)「大学生観光まちづくりコンテスト」では、1・2年生だけのチームながら、堂々としたプレゼンテーションとプラン内容が高く評価され、青森県知事賞を受賞。現在も実現に向けて活動中だ。

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