高校生の保護者のためのキャリアガイダンス2017
9/66
持ちにもなるでしょう。でも、子どもの人生は本人のもの。その事実を改めて確認し、子離れを覚悟する時期かもしれませんね。子どもに対して何をするかも大事ですが、自分はどうあるべきかも大事です。私は八百屋の息子で、体調が悪くても毎日仕事をしている親の姿は、「簡単に学校をサボっちゃいかん」という無言のメッセージでした。言葉で伝えなくても、保護者の生き様を通して社会性や倫理観を教わりました。そんなやり方もあるかもしれませんね。●いつまでも過保護ではいけない、そうはいっても急に手放しするのも不安…と、保護者も揺れる時期だと思います。過保護と放任の間にある「ちょうどよい距離」は、どこにあるのでしょうか。森口▼すべての親子に共通する「ライン」なんてないと思いますよ。その行動が過保護かどうかは、子どもの状況によりますから。例えば、自分で何も考えていない子にアドバイスするのは子どもの主体性を奪う過保護かもしれませんが、自分の考えをもっている子にいくらアドバイスしたところで問題ないでしょう。私たち教員も、その子に応じた言葉がけを意識しています。保護者の方も、一律の基準にとらわれなくてもよいのではないでしょうか。河口▼いずれにしても、思っている以上に離れるぐらいがちょうどいいと思いますよ。上からの目線で指示するのではなく、対等な目線で「信頼して任せる」がポイントになってくるでしょうね。椿▼わかります。保護者の子どもへのかかわりは発達段階によって変化していくもので、小学生には「リード」、中学生には「同調」、そして高校生には「距離感をもった信頼」が子どもの成長を促すのだと思うんです。保護者はあまり手出し・口出しをせず、信頼して待つべき時期にきているのでしょう。森口▼私も「信頼」は大事だと思います。もし失敗をしたときも、その後の方向性がまったく違ってきますから。私自身、チームで仕事をするときに感じるのですが、仲間から信頼されているという気持ちを感じるからこそ、失敗を次へのステップに生かそうと思えるのです。親子関係でも同じでは? 「任せきって見ていない放任」と「信頼して見守る」は、行動は似ていてもまったく違うものでしょう。●何をするか、どこまでするかよりも、「信頼」の有無が大切なんですね。河口▼高校生なら、その信頼をしっかり受け止める力がある。そこは中学生までと違うところです。保護者の方にしてみれば、子どもの未熟さを知っているだけに信頼して任せるのが難しいかもしれません。そこで、信頼に足るまで成長するのを待つのではなく、「成長」より先にまず「信頼」してみてはどうでしょう。例えば、進学校で勉強が大変なのに「ハードな部活に入りたい」と子どもが言った時、「今はうまく両立できていないけれど、きっとこの子はやっていける」とまず信頼してあげる。すると、子どもは失敗しながらも、その信頼に沿うように変わっていくものです。高校入学を機に、「今後は信頼して任せるよ」と保護者のスタンスを宣言するのも手ですね。鈴木▼そうですね。高校生活とは、保護者から受けた信頼を、3年間かけてつくりあげる過程だともいえる。その過程を、保護者の皆さんにも支えていただくし、ぼくら教員も全力で支援していきます。河口▼こうして保護者の立場で考えていくと、皆さん「本当はどうあればよいんだろう」「ちゃんと理想の保護者になれているだろうか」というストレスを感じているのではないかと思います。でも、保護者だって迷ったり、やり方がわからなかったりして当然。お子さんにそのまま「迷っている」「わからない」と伝えたっていい。無理して「偉い親」でいる必要はないんです。高校生はちゃんと理解してくれます。「親もわからないなりに自分のことを気にかけてくれているんだな」と子どもが知るだけでも、両者の信頼感は増すのではないでしょうか。●高校生の保護者としてのギアチェンジのしかたについて、たくさんのヒントをいただきました。ありがとうございました。大切なのはそこに「信頼」があるか保護者だって迷ったりわからなかったりして当然。そのまま子どもに伝えても、理解してくれるのが高校生。河口先生9for Parent 2017
元のページ
../index.html#9