高校生の保護者のためのキャリアガイダンス2018
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東京都立日野台高校佐々木 宏先生指導教諭。国語。生徒の学びと社会とのアクセスポイントを多種多様な形で創り出すために、授業や行事、部活動を、大学、大学院、NPO法人、企業、文科省、東京都、地域、保護者と連携して行っている。や行事に関わる時間が多く、生徒の思考が学校の中だけで完結しがちで、こうしたビジョンをもてるようになる機会が少ないと感じます。保護者の方々は学校にお子さんを任せきりにせず、社会人として世の中との接点をつくってあげる役割の一端を担っていただければと思います。 ただし、学びたいことが見つかったとしても、どんな分野でも基礎学力は必要です。高校の授業は進度が速いので、1年生でつまずくとリカバリーが難しいため、1年生での学びが大事になります。多くの高校では、1年次の基礎科目をきちんと習得できなかった生徒が、2年次で同じ科目を学び直せるような科目配置がされていません。生徒自ら学ぶことが重要となり、家庭学習している生徒とそうでない生徒で差が出ます。 1年次の基礎ができて、社会と触れることで自分自身が学ぶ目的を見つけられれば、どんな生徒でも自ずと学び出す力があると、私は信じています。 39ページの卒業生アンケートで、「勉強にエンジンがかかった」きっかけが「模試の結果」や「成績が落ちた」ということは、子どもたちは外圧によって勉強していることを物語っています。 先生方のアンケートでも「中学時代に塾依存だった生徒がつまずきやすい」という回答が多く見られたのも、それまで塾があるから勉強していた、塾で勉強の方法やスケジュール管理も指示されていたということの裏返しだと思います。 また、今までの目標だった「高校入試」という圧力もなくなります。つまり、塾や入試という外圧がなくなって、勉強に対するモチベーションがなくなっているのが入学直後の時期で、つまずきやすくなっているのではないでしょうか。「何をどうやって学べばいいか」というマインドセットが一旦なくなるので、それを新たにセットできた生徒が伸びていきます。 ただし、新たな目標を「大学に入ること」としてしまうと、大学入学後に同じことを繰り返します。こうした外圧に縛り付けられて勉強するのではなく、自分から「これを学びたい」ということを見つけて、自ら学ぶようにならなければ、これからの社会を生き抜いていくことは難しくなると思います。 とても大事なことは、一人ひとりの生徒自身が「何のために学ぶのか」ということを、自分のものさしでもてるかどうかです。「将来、こういう方面で活躍したい」とビジョンをもった生徒は、たとえ入学時の成績が低くても、いずれ自ら学び始めて伸びていきます。 ビジョンは特定の職業でなくてかまいません。今ある職業が子どもたちが社会に出るときに存在するとは限らない時代です。例えば「アジアの人々の役に立てる人になりたい」というようなことでよいのです。ビジョンをもつことは、偏差値の高い低いより、子どもたちにとってはずっと重要です。 しかし残念なことに、今の高校は学校側が大学入学をゴールにしてしまっている面があるところもまだ多いのも現実です。また、部活モチベーションを外圧から「自分の学びたいこと」へ将来のビジョンと学ぶ意義をもつことが、偏差値より大事1年次の基礎がポイント苦手分野を克服しておきたいここまでアンケートを元に、子どもの気持ち、先生たちの見方を見てきました。その意味について佐々木先生に読み解いてもらいました。42for Parent 2018

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