高校生の保護者のためのキャリアガイダンス2019
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私は生徒や自分の子どもを大人として扱います。子ども扱いして命令や指示をしたり、頭ごなしに否定すると子どもたちは心を閉ざします。教員と生徒、保護者と子どもも対等なパートナーシップであるべきだと考えています。先が見えない今の時代は、すべての世代が協働して取り組まなければ解決できないことであふれており、若い世代から学ぶことも無数にあります。 一方で、保護者は子どもにはない経験をもっています。その経験や自身の仕事の話を子どもに語ってあげればいいと思います。ただし、自分の失敗から「後悔しないようにおまえは勉強しろ」というのはよくありません。後悔しているなら今やればいいのです。失敗してもやり直せる姿を見せる方が効果的です。親が楽しんで何かを学ぶ姿は、子どもたちの学びの意欲を駆り立てることにつながります。 子どもに「幸せの創造者」になってほしいのは保護者や教員共通の想いです。子どもがいつも笑顔で幸せに過ごすには、できないことや失敗はその子の可能性であることを本気で信じてあげるのが大人の役割だと思っています。一人前の大人として扱い可能性を信じてあげるできなかったことを「可能性のマイナス」と捉え、それを「可能性のプラス」に転じさせてあげることです。例えばテストで子どもが20点だったら「80点伸ばせる可能性があるね!」と本気で伝えます。実際私は生徒たちにテストを返すときにそう言っています。ただし、伸ばす努力をするかの選択は本人の責任です。依存型の学習者の場合、できなかった80点を先生や塾のせいにしてしまいますが、自律的学習者は伸ばすためにはどうしたらいいか考えるようになります。子どものスマホ依存も気になるところです。しかしスマホには良い機能もたくさんあり、おすすめなのは学習動画です。子どもが勉強でよくわからなかったことを「○○ 動画」と検索すると、さまざまな解説動画が出てきます。なかには全編アニメでわかりやすく解説されているものもあり、勉強が苦手な子どもでも理解しやすくなっています。また、世界の大学の講義も日本語の字幕付きで見ることもできて、保護者が見ても教養になるものも多いです。子どもの学びへのモチベーションを築くことに家庭の役割は多々あります。心理学者のマズローの「自己実現理論(欲求5段階)」の各段階にそのヒントがあります。その第1段階が「生理的欲求」を満たすことで、生命を維持するための本能的な欲求です。基本は衣食住を満たすことで、なかでも食事は大切です。最近は保護者も高校生も多忙で個食が問題となっていますが、せめて週に何日かは家族で食卓を囲み、会話しながら食事をする時間が欲しいものです。第4段階の承認の欲求とは、自分が集団で価値のある存在と感じることですが、この中には二つのレベルがあります。低いレベルの承認欲求は他者から尊敬されたい気持ちで、高いレベルは自己尊重です。例えばテストで100点をとって「すごいね」と言われて喜ぶのは前者で、「自分の学び方が正しかったんだ」と自己信頼感が高まるのが後者です。学校や家庭で、結果より過程に目を向け、行動を認めてあげることで満たされる欲求です。第3段階は愛と所属の欲求で、ベースは「家庭に必要とされている」という保護者との関係です。この欲求を満たすために、家庭で一人前の大人として扱い、家事を分担させたり、お互いに感謝しあうことが必要です。子どもに選択させるのもその一つです。また、家庭や学校の仲間、親戚など、自分にはさまざまなステークホルダーがいることに気づかせてあげることも大切です。自分は一人ではないと感じることが自信をもって前に進む原動力となるからです。モチベーションを築く第2段階が安全の欲求で、ここでの「安全」とは、生活するうえでの安心感、経済的な安定性、良好な健康状態の維持のこと。ほとんどが保護者の役割です。学びのうえでの安全とは、「失敗しても間違えてもいい」「やり直しがきく」と子どもたちに感じさせることです。学校でも間違いを恐れると生徒たちは発言やチャレンジをしなくなります。保護者も失敗したらやり直す姿を見せて、子どもが間違いを楽しめるようにしてあげてください。第5段階の自己実現の欲求とは、「なりたい自分になる」欲求です。大企業でも経営難に陥る現在は、一つのことにとらわれず、マルチタスクをこなす働き方が求められていきます。子どもたちの進路も絞る必要はなく、複数の選択肢があった方が一つがダメだったときに次に進みやすくなります。そのためには子どものやりたいことを我慢させないことです。選択した責任は本人にありますが、保護者から一つに絞らせるように仕向けないことも大事です。子どもに自主勉強の習慣が身につかないことを思い悩む保護者もいると思います。勉強の時間を生み出す小さな工夫を積み重ねることが効果的です。例えばテレビを見るなど好きなことをしているときに、必ず勉強道具を近くに置きます。「テレビwith教科書」です。「CMの間に教科書を3回音読する」というルールを決めてやってみます。テレビは惰性で見ていることも多いため、細切れの音読の方に気持ちがいくようになり、主(テレビ)と副(音読)が逆転します。子どもが主体的に学び始める基礎をつくるために、家庭でできるポイントを山本先生に伺いました。15for Parent 2019
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