高校生の保護者のためのキャリアガイダンス2019
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 一方、保護者のなかには、高校での学びの目的を「偏差値の高い大学に入ること」と据えている方も少なくありません。もちろん、希望する大学への進学は人生における自己実現の一つですので、高校の学びはそのための手段とも言えます。しかし、難関大学合格だけを目的にした学びでは、「予測困難な時代に何があっても大丈夫な力」を身につけるという点において、あまりに視野が狭すぎます。これからの世の中の変化や子どもたちの将来を考えたときに、偏差値や教科学力の向上だけを重視した勉強で本当に大丈夫なのか、考えていただきたいのです。テストの点数や成績だけで、子どもの能力や成長を判断していないでしょうか。関心事を深く探究する力、自ら考える力、人と協力しながら物事を進める力、学んだことを使って何かをしたいという課題解決意識…そういった力や意識が育って 昨今は、程度の差はありますが、いわゆる「アクティブ・ラーニング」が高校教育にも浸透し、授業の組み立ても従来とは大きく変わってきています。アクティブ・ラーニングとは「生徒の主体的・対話的で深い学び」のことであり手法を指すわけではありませんが、実際に授業の中にディスカッションやプレゼンテーションを組み込むことで、生徒の主体的な学び合いが進んでいます。かつて一般的だった、教員が生徒に知識やノウハウ(知識の使い方)を教える、という一方的な授業ではなく、教員はファシリテーター的な役割に徹します。どんな導入なら生徒の興味・関心を引くか、どんなテーマについてディスカッションやプレゼンテーションをさせるか、これらの手法をいかに効果的なシーンで使うか、どのタイミングでどの生徒に問いを投げかけるか、関連する知識をどう補っていくか…こうしたさまざまな要素を考慮しながら、「生徒の主体的・対話的で深い学び」を組み立てているのです。いるかどうかという視点を、ぜひもっていただきたいと思います。 価値観が多様化する今の時代は、子どもの教育について、学校と保護者とが同じ方向を見て歩んでいくことが大切です。わが子が通っている学校では、どのような力を育てるためにどのような教育が行われているのか、背景にある意図や目的も含めて理解し、学校と同じ視点をもっていただきたいと思います。 例えば私が校長を務める大妻嵐山中学校・高等学校では、従来は非公開だった授業研究会を「授業づくり公開授業研究会」とし、保護者や一般の方にも公開するようになりました。保護者からは「先生方がここまで努力し、試行錯誤されているとは知らなかった」という声を多数頂き、学校教育を閉じたものにせず、保護者に向けて発信し共有することの重要性を改めて感じました。 とはいえ現状としては、大学受験指導に偏った教育を行う学校は少なくありません。しかし、学びの場は学校だけではありません。学校、塾・予備校、自宅に加えて、地域での活動など第4の学びの場があれば、そこから世界は大きく広がります。親としてできるのは、出会いの場を作ること。わが子が学びのなかでおもしろい、すごい、楽しい、好きだと感じている探究心の芽を伸ばせる場をつくることです。受験指導一辺倒の方針に疑問を感じられたのであれば、それはむしろチャンスなのです。 子どもたちは、可能性もバイタリティも大人が思う以上にたくさんもっています。大人はつい自分の経験から勉強や進路選びに口出しをしたくなるものですが、子どもを信じ、学校と家庭とが一体となってバックアップし、その芽を伸ばしていきましょう。脱・偏差値主義。高校の学びの目的は…?大切なのは、学校と保護者が同じ方向を見て歩んでいくこと17for Parent 2019

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