キャリアガイダンス保護者版2020
16/66

決して安泰ではないのです。だから歯医者はやめておけ、と言いたいのではありません。これからの時代に大切なのは、「どういう歯科医師だったら食べていけるか」を考え、付加価値を生み出すことです。私の知る限りでも、英語・中国語が通じる、夜遅くまでやっている、インプラントの技術に卓越しているなど、付加価値のある歯科医院はとても繁盛しています。どんな職業であっても、常に学び・成長を続け、世の中の変化に合わせてその時々に必要とされる価値を提供できることが、「食べていける条件」になるのです。 かつて大学は、専門的な知識・スキルや幅広い教養を身につける場でした。しかし、社会の変化に伴い「食べていける条件」が変わった今、プラスアルファの力を養うことが求められるようになったのです。 大学の学びの三本柱となるのが、「考え方・学び方」「汎用基礎能力」「専門の知識・技術」です(図6)。社会からの期待・要請を踏まえ、特に「考え方・学び方」と、どんなことにも広く応用できる「汎用基礎能力」の部分が重要視されるようになり、また変わってきてもいます。 最もわかりやすい例が、授業(学び方)の変化です。かつて主流だった大教室で先生の講義を聴くという一方向の学びから、少人数で行うゼミ形式やプロジェクト型(課題解決型)の双方向の学びへとシフトしています。自分の意見を発言・文章化する。学んだ知識を基に答えのない課題の解決策を模索する。グループメンバーと意見を交わし合い、合意形成をする。理論を基に試行錯誤し、実際にやってみる。こうした学生主体の活動を通して理解・思考を深め、実践につなげていく学びが「アクティブ・ラーニング」です。 授業以外でも、大学ではアクティブラーニング型、体験型の学びの機会が増えています。関西大学商学部の「ビジネスリーダー特別プログラム」、北海道大学の「新渡戸カレッジ」などのリーダーシップ育成型プログラムをはじめ、地域の人々や行政と協働して進める地域連携型プロジェクト、企業へのインターンシップ(就労体験)、多彩な海外留学プログラムなど、各大学が特色あきています。背景にあるのが、いわゆる〝仕事で使える〞知識やスキルの変化です。ニューヨーク市立大学のキャシー・デビッドソン教授が著書の中で「2011年度に小学校へ入学した子どもの65%は、大学卒業時に今は存在しない職業に就く」と予測しているように、今は有効なスキルも、15年後にはまったく役立たないものになっている可能性があります。これからは、手に職をつければ、資格があれば、大企業に勤めれば安泰…ではないのです。 歯科医師を例に考えてみましょう。歯科医院は全国に約6万8千か所あり、実はコンビニ(約5万3千か所)よりもたくさんあります。つまり、歯学部に行って無事に歯科医師になったからといって、聴講型の学びから、学生主体の〝アクティブ・ラーニング〞へ図6 大学の学びの三本柱図7 グローバル教育に力を入れている 大学・学部の例16for Parent 2020

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る