キャリアガイダンス保護者版2020
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パートナーであることが望ましいのです。 人生100年時代と言われ、子どもたちは22世紀まで生きる可能性が高い時代です。残念ながら私たち教員や保護者の皆さんが22世紀を迎えるのは難しいです。保護者の方々に「お子さまにどう育ってほしいですか?」と伺うと、近い将来の目標はさまざまですが、最終的には「自分たちがいなくなっても、わが子が一人で幸せに生きていってほしい」という声が、多くの方々の共通の想いとして返ってきます。 「一人」というのは孤独という意味ではなく、保護者からの自律ということです。「幸せ」とは、独りよがりな幸せではなく、「人とうまくやっていってほしい」という願いが込められています。そのためには、誠実さをもって他者に貢献できる人にならなければなりません。社会人の姿として言い換えると「またこの人と一緒に仕事がしたい」と思ってもらえる姿です。皆さんが社会人としてそう感じる人とは、単に仕事のスキルが高いだけではなく、人間性も含まれていますよね。これからの時代に必要な資質・能力とは、実はそのことを言っているのだと私は思います。 つまり、保護者や先生がいなくなっても、自ら学んで成長したいと考える人材に子どもたちを育てなければならないのです。そのために保護者は、子どもたちの自律を促す必要があります。小・中学校の頃とは接し方を変えていくということです。その段階を示したのが図9です。 幼少期は子どもの前に立ちはだかる障害物を保護者が取り除いてあげていたかもしれません。成長とともに保護者の介入が少しずつ減っていき、手助けしていたのが手は出さずに見守る姿勢へ。最終的には保護者は先に死にますので、そのときに「自分がいなくてもわが子は大丈夫」と信じられるようになるのがゴールです。皆さんは今、どの段階にいますか? 子どもとどう関わっているかを保護者会で聞くと、子どもをほめていない方が結構いらっしゃいます。よかれと思って短所を指摘して直させようとしている人が多数を占めています。弱点の克服は大事ですが、保護者に指摘されるとやる気を失う結果に結びつきやすいのです。それよりも長所をほめると達成感や自信につながり、学びの意欲がわきあがるものです。 図10のように、子どもへの声がけでやった方がいいのが「S3H」。「叱る」「ほめる」「育む」「はげます」です。「叱る」は「怒る」のとは違って、反省点があるときにだけ冷静に伝えること。「S3H」を保護者が心掛けることで、自ら伸びる子どもへと成長してきます。逆にやらない方がいいのが「SOOK」=「責める」「怒る」「脅す」「キレる」。これでは子どもを萎縮させるだけで、やる気を促すことには結びつきません。 現代の保護者の方々は非常に多忙で、仕事で疲れて家庭でもつい愚痴を言いたくなることも多いと思います。家庭は保護者も弱音を吐ける場であるべきですが、高校生にもなると子どもたちはそうした保護者に対して気をつかって、「進路の相談をしたいけど、親も大変そうだから今度にしよう」などと遠慮していることもあるのです。 例えば保護者が愚痴ではなく、仕事で達成感を感じられた経験などポジティブなことを家庭で話せたら、子どもたちの人生観や職業観は前向きに変わる可能性を子どもが幸せに生きるために寄り添いながら自律を促す長所やプロセスをほめ、自ら学びたい気持ちを育む図9 子どもへの接し方の段階20for Parent 2020

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