キャリアガイダンス保護者版2020
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大事なのは、保護者が自らの価値観を更新していくこと。それが、人生100年時代を豊かに生きることにもつながるのです。 転職や副(複)業・兼業により自らキャリアを形成していくこれからの時代は、「マルチ・アイデンティティ」の時代でもあります。マルチ・アイデンティティとは、「〜である自分」を複数もっているということ。よほどの才能や一芸をもった人を除き、「自分は〜だからこれしかできない」というアイデンティティの在り方は変化に弱く、これからの時代を豊かに生きることは難しくなるでしょう。 Aとしての顔もBとしての顔もあって、Cとしても活躍している。そんな在り方のベースを作るのが、大学時代です。従来、多くの大学では専門性を一つに絞る教育を行ってきましたが、これからは複数の「強み」を磨くことが重要になります。経済を学んで、プログラミングを勉強して、音楽もやる。学部を出るまでに3つくらいの素養を身につけておけば、社会に出たときに何か1つは通用するものです。 また、転職や副(複)業・兼業により、残り2つもいかようにも活かせます。ただし、この素養は戦略的に培う必要があります。たとえ1000万円投資しても1日では英語力を身に付けられないように、キャリアの形成には物理的に時間がかかります。だから、もし世界を舞台に活躍したいのであれば、逆算して前々から英語の勉強をしておく必要があるのです。 大切なのは、1つに決めずに複数の選択肢をもっておくこと、「or」ではなく「and」思考で考えることです。おすすめなのが、「やりたいことを3つ挙げる」という方法です。1つや2つには絞れなくても、「3つ」と言われると、不思議と挙げやすいものです。お子さんが進路や将来に悩んでいたら、ぜひ、「3つ挙げてみて」と声をかけてあげてください。大学では3つの武器を身に付け、卒業したら3つの職業に就く。これが、これからの時代を生き抜くための術になり、結果的には人生を豊かにするのです。 これからの時代を生きる高校生に、今のうちから意識してほしいのが、社会で今何が起きているかにアンテナを張ること、そして、「作り手」の立場で物事や世の中を見てみることです。遊園地もゲームもテストも、ただ享受するのではなく、それを作った人の意図に思いを馳せると、いろいろなことが見えてくるはずです。普段の生活や行動も、消費から生産へと意識を変えることで、感じ方も変わってくるでしょう。 まずは、保護者自身が自分の価値観を今の時代に合わせて更新すること。そして、自ら学び続け、視野を広げ、新しいことにも挑戦すること。自分と子どもの人生を並列した年表を作り、お互いが今どのステージにあるのかを客観的に捉えてみるのもおすすめです。子世代が生きる社会には課題が山積みなのは確かですが、無限の可能性があるのもまた確かです。危機感をもちつつも未来を悲観することなく、子どもと一緒に進化し続けていただきたいと思います。保護者に求められること営業として企業に勤務転職して海外へデザイナーとして副業大学では3つの武器を手に、卒業したら3つの職に就く図2 自分の柱になる3つの強みを育てる(例)8for Parent 2020

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