キャリアガイダンス保護者版2021
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主軸はあくまでも学びなのです」 では、わが子が「自分にとって良い大学」を選ぶために、保護者はどのようなサポートができるのでしょうか。まず、マッチングの際の基準として、倉部さんは「学問理解・学校理解・自己理解」の「3つの理解」(図3)を挙げます。 「なぜその学問分野を学ぶのか、数あるなかでなぜその大学なのか、自分自身はどうなりたいのか・なぜそれを学びたいのか…という問いに子ども自身が答えられるよう、できれば1年生の頃から対話をしながら理解を深めていけるといいでしょう。学校理解については、対照的な大学を対比するのがおすすめです。例えば、大規模校・小規模校、共学・女子大などの軸を設定し、比べてみるのです。データからわかることもあれば、学生やキャンパスの雰囲気など肌で感じることもあるので、多面的に見ることをお子さんに薦めましょう。いを起こしてしまいます。実際、大学の中退者や留年者の割合は、小さくありません。保護者世代にとっては〝大学=自由を謳歌する場所〞という印象があるかもしれませんが、今はしっかりと学ぶ場へと変わってきています。サボっていたら留年もしますし、卒業もできません。多様な経験を積むことも大事ですが、大学生活のろんな大学を見ていくなかで見る目が磨かれますし、なんとなくこういう系統の大学に惹かれるな…という自分にとって重要な評価軸も見えてくるはずです」 難しいのが、そこに保護者がどう関わるか。「ツッコミ役になってほしい」と、倉部さんは言います。 「お子さんが主導権を握り、進む道を自分で決めることが大事ですが、若いからこそ安易に決めがちなところもあると思います。『〜に興味がある』『〜大学に行きたい』という発言には、『なぜ?』『〜のどこがいいと考えたの?』と問いかけてみてください。問いがあることで、お子さんの思考はより深まるはずです。『こういうデータや情報もあるみたいよ』と、リソースや別の切り口を提供するのも良いでしょう。保護者が意見を言い過ぎると〝要望〞になってしまうので注意が必要です。進路選択において、運転席でハンドルを握るのは、あくまでもお子さんです。保護者が望む方向に誘導するのではなく、そこは覚悟をもって子離れをしましょう」 報道にもあるように、コロナ禍は大学生に大きな影響を与えました。オンライン授業が増え、クラブ・サークル活動が自粛になり、友達にも会えず、バイトも思うようにできない…。思い描いていたキャンパスライフを送れず、孤独感に苛まれている人も少なくないでしょう。一方、「大学で何を学びたいかが明確な学生は、コロナ禍でもモチベーションを維持できていると感じる」と、倉部さん。今、「何のために大学に行くのか」を改めて問い直すときが来ているのかもしれません。学問、学校、自己について、〝3つの理解〞を深めていく進路選択の主導権を握るのは子ども。意識的に子離れを【総合型選抜】従来は「AO入試」と呼ばれた方式で、この方式による募集枠は年々増加している。エントリーシートや志望動機書などの書類審査に加え、面接、小論文、プレゼンテーションなどを課し、受験生の資質・能力や学習に対する意欲、適性などを時間をかけて総合的に評価する。2021年度入試からは、学校推薦型選抜、総合型選抜共に、学力を確認する評価方法の活用が必須となる。【学校推薦型選抜】いわゆる「推薦入試」。出願には在籍する高校の校長の推薦が必要で、高校の成績など出願条件が設定されている場合もある。国公立・私立を問わず多くの大学が実施し、近年は東大や京大などの難関国立大学でも導入されている。【大学入学共通テスト】2020年度入試まで実施されてきた大学入試センター試験の後継にあたる試験。初回となる今年は1月16日(土)・17日(日)に実施され(今年は特例で追加日程あり)、約53万人が受験した。記述式問題の導入は議論の末に見送られ、当面は全問マークシート方式の予定。6教科30科目のなかから志望大学が指定する教科・科目を選択して受験する。【3つのポリシー】各大学が教育理念に基づき策定・公表するもので、「ディプロマ・ポリシー(DP)」「カリキュラム・ポリシー(CP)」「アドミッション・ポリシー(AP)」の3つからなる。DPは卒業認定・学位授与の方針であり、「学生が卒業までに身につけるべき資質・能力」を示す。CPはカリキュラム編成・実施の方針であり、「教育の内容や方法、評価方法」を示す。APは入学者受け入れの方針で、「入学者にどのような学力を求めるか」や「具体的な入学者選抜方法」を示す。まさに大学の本質を表したもので、自分に合った大学や学部を探す手がかりになる。図2 同じ学部名でも「3つのポリシー」には大きな違いがあることも図3 良きマッチングのための3つの理解DPCPAPB大学 経営学部A大学 経営学部●グローバルビジネスパーソンの育成● 難関資格の取得●就職率9割達成● 企業と連携した実践的なプロジェクト型授業の展開●海外留学の必修化●専門科目の2割を英語で開講● 資格対策講座、公務員対策講座の充実●地元企業へのインターンシップ充実●ICT教育の充実● グローバル教育への意欲や関心をもっていること(その確認のための面接や小論文を入学者選抜で義務化)● 外部英語試験の成績優秀者は一部試験免除● バランスの良い基礎学力をもっていること●指定校推薦枠の積極的活用今までとは大きく変わる!?わが子の学びの“これから”を知ろう!※DP、CP、APについては、ページ下の用語解説【3つのポリシー】を参照してください。15for Parent 2021

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