キャリアガイダンス保護者版2021
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人の行動には、その背景や根底に「考え方」が必ずあるからです。「考える」のは「自分が存在している」からできることです。つまり「自分のあり方」が言動には反映されているはずです。「人としてのあり方」や「自分はどうありたいか」(Being)が大事で、それを子どもたちには考えられるようになってほしいと願っています。(図2 下) 例えば、新型コロナウイルス感染症の流行で「ソーシャル・ディスタンス」という言葉が出てきました。これについて、私は中学生と共に考えたことがありました。「実際には『物理的な距離を、意志をもって取る行為』のことだから『フィジカル・ディスタンシング』では?」と、話し合いました。 「人と距離をとる」というDoingの根底に、「お互いにコロナを感染させないようにしよう」という考えや、「人に配慮しながら人とつながって生きていきたい」というBeingがあることを、生徒たちは感じとっていたと思います。 今は変化が激しく予測不能な時代で、変化に対応する力が必要と言われています。しかし、自分はどうありたいかという土台であるBeingがないと、変化が起こるたびに対症療法的な対応しかできず、自分がやりたいこと、ありたい姿を見失ってしまうかもしれません。 そして、予測不能と言われる時代でも、自分が行動しようとしている少し先の未来は予測しなければなりません。予測することを諦めず、変化に対応し、起きた変化をさらにより良く変化させ、そのことによって自分を変化=成長させる力が、これから求められていく力だと考えています(図2)。昨日よりも今日の自分を少しでも成長させる力、これこそが「学びに向かう力」なのではないでしょうか。やりたい!」と感じる、ワクワクした気持ちが原動力となるからです。 高校1・2年生のうちは、興味のあることをどんどん広げていってあげましょう。絞り込むのは3年生の進路選択のときでいいのです。保護者の皆さんは教員の我々よりも広い世界をご存知です。皆さん自身が社会人としてのキャリアモデルになれますし、学校以外の社会を見せてあげて興味の幅を広げる応援をしていただければと思います。 子どもたちのやる気や自ら伸びようとする力を育むために、家庭での言動で工夫すべきことがあります(図3)。やった方がよいことが「S3H」で、「叱る」「ほめる」「はげます」「育む」です。「叱る」は「怒る」のではなく反省点があるときだけ冷静に伝えることです。特に、自律への8段階で、「BELIEVE IN」のような段階に行っているときにほめてあげると、それが子どもにとっての達成感や自信、自己肯定感の高まりにつながり、さらなるやる気へとつながっていきます。 逆に保護者がやらない方がよいのが「SOOK」。「責める」「怒る」「脅す」「キレる」です。子どもが萎縮してしまい、やる気に結びつかなくなります。 S3HとSOOKで大事なのはブレないこと。子どもが同じことを図3 自ら伸びる子どもを育む保護者の言動反省点を改善してほしいときに、冷静に理由を説明して叱る*良いことをしたときにはSは不要良い言動や長所をほめる。自分で改善策を見つけたらほめる改善するための行動を起こしたらはげます希望をもって行動を継続させる力や、何回でもどんなことにも取り組む力を育む図2 求められる4つの力とその土台 子どもたちが自分のあり方を見つけ、自分を変化させる力を伸ばすには、自分のやりたいことや好きなことを見つける必要があります。自ら学び続けるには、誰かに強制されるのではなく「自分から26for Parent 2021

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