キャリアガイダンス保護者版2021
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教えて!「今の大学の教育は、保護者の時代とどう違うの?」大学進学というと、つい入試ばかりに注目しがちになります。しかし、各大学で入学後にどのような教育を行い、学生にどのような力をつけさせようとしているかを知ることも重要です。大学入試改革としての大学入学共通テストは今春から始まりましたが、実は、大学では2017年から、「三つの方針(ポリシー)」に基づく抜本的な教育改革が進行しています。保護者の時代とはすっかり様変わりした大学教育の姿は、いったいどうなっているのでしょうか。文部科学省の調査を基に、見ていきましょう。方針」の達成状況を点検・評価していると回答しました。そうした大学は、点検・評価の結果を受けて、教育を年々見直し、進歩させていくのです(14・15ページにも関連記事あり)。 では、具体的にどのような教育が展開されているのでしょうか。図1が、その具体的な取組の状況です。このうち「能動的学修(アクティブ・ラーニング、以下AL)」が特に注目です。高校では現在「主体的・対話的で深い学び」として取り組まれていますが、座学で漫然と一方的な講義を聞くのではなく、調査や討論、グループワーク、フィールドワークなど、能動 「三つの方針」とは、▽卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー=DP)▽教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー=CP)▽入学者受け入れの方針(アドミッション・ポリシー=AP)のことです。 順番が逆じゃないの?と思った方もいるかもしれません。実は、各大学が、社会に対してどんな人材を送り出すかをまず考え(DP)、そうした人材を4年間で育成するためのカリキュラムと指導方法を工夫するとともに(CP)、そうした各大学独自の教育にふさわしい入学生を選抜する(AP)、という考え方に基づいているのです。入学者の偏差値が高いほどいい教育ができる、という考え方とは、真逆の発想です。 実際、77・7%の大学が、「三つの的な活動も取り入れて、専門的な知識を得るだけでなく、課題発見・解決能力やコミュニケーション能力など、社会で役立つ力も育もう、という形態です。 そんなALを「実際に行っている」大学は93・5%に上っています。それだけ必要な学習方法だ、と、ほとんどの大学が考えているわけです。さらに今後も、ALの授業科目の「増加を図る」とした大学が、71・9%もあります。受け身の姿勢で授業を受けることは、もう大学では許されません。「履修系統図(カリキュラムマップ、カリキュラムチャート)」とか「ナンバリング」にも注目が必要です(図1参照)。DPに基づいてCPを具体化するために、4年間のカリキュラムを効果的・効率的に編成していこうというものです。 保護者の学生時代なら、必修科目のほかは自由に科目を選択し、卒業単位数を満たせばいい、という考え方でもよかったでしょう。しかしカリキュラム上、科目の履修の順番まできちんと決まっていれば、落としてもいい単位もなくなります。ひとつひとつの履修科目にそれぞれ真剣に取り組むことを通して、卒業時にはDPで期待されるような力がつく、というわけです。 最近、大学生が真面目に授業に出ている、という話を聞いたことはないでしょうか。こう聞くのも変な話ですが、保護者世代、というよりその上の世代では出欠を友達に頼む「代返」に頼り、後は一夜漬けの試験や教育ジャーナリストが最新解説教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。Webサイト「リクルート進学総研」に「教育トピック 教えて!」シリーズを連載。 教育ジャーナリスト 渡辺敦司受け身の姿勢はもう通用しない30forParent 2021

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