リポートでやり過ごすことが横行していました。もちろん今は、そうしたことは通用しません。団塊の世代の後、大学が「レジャーランド化した」と言われたのは、遠い昔です。バブルを経て、今や大学は本当の意味で「学びの場」に変化を遂げているのです。 少し脅かしすぎたかもしれません。でも、大丈夫です。大学の方でも「初年次教育」という、入りたての学生に、大学ならではの学び方を身につけさせる教育を、多くの大学が工夫しています。特に、プレゼンテーションやディスカッションの技法を身につけたり、論理的思考や問題発見・解決能力の向上を図ったりすることは、社会でも必要な能力であり、各授業のALで鍛えられることを通して、卒業時には即戦力として通用する力にまで高めることが期待されています。 なかでも社会に直結する学修が「キャリア教育」です。図2を見ると、「企業関係者、OB、OG等の講演等の実施」などだけでなく、「勤労観・職業観の育成を目的とした授業科目の開設」「今後の将来の設計を目的とした授業科目の開設」「インターンシップを取り入れた授業科目の開設」など、単位を取得させる正式な授業として開設している大学が多いことに気がつくことでしょう。 これも昔は、学業=学問と就職活動が別物と考えられていた向きが強かったように思います。しかし今は、4年間の「学修」を通して、職業に直結する専門的知識はもとより、社会的・職業的自立や、社会・職業への円滑な移行に必要な力を育成することが目指されています。 インターンシップも、同じことです。「就職に有利だから参加する」といった意識では、伸びる力も伸びません。 グローバル人材の育成も、大学の大きな課題です。世界的な研究大学にとどまりません。地域人材の輩出を担う大学にとっても、人的にも物的にも世界とつながって地域を発展させることが課題であり、そのためにも大学が、地域における「知の拠点」となることが求められています。図1 カリキュラム編成上の工夫の具体的な取組図2 教育課程内での「キャリア教育」の実施状況英語力育成や交流協定は当たり前「キャリア教育」も4年間の学修と関連 英語教育でネイティブ・スピーカーを活用している大学は80・9%、能力別クラス編成を実施している大学は74・2%を占めます。会話中心や速読中心などの目的別クラス編成も52・2%の大学が行っています。英語について、さまざまな外部試験のスコア等を到達水準の一つとして設定している大学は25・8%ですが、その多くが留学などを視野に入れているものとみられます。 グローバル化対応という点では、国内大学でありながら、外国語のみによる授業を実施する大学も近年増加傾向にあります。また海外と大学間交流協定を締結している大学は、87・8%に広がっています。とりわけ協定先がアジア地域の大学である大学が82・8%に上ることも注目されます。 今後、グローバル化対応が求められるのは、企業の規模、産業あるいは地域を問いません。国内外を問わずグローバルに活躍できる人材を育成する役割も、全国に800校近くある大学に期待されているのです。 高校は、そんな大学に進むための基礎を培う場でもあります。単に入試をパスすることだけではなく、高校で培った力を大学でさらに伸ばして社会で活躍できることを目指してほしいと思います。履修系統図(カリキュラムマップ、カリキュラムチャート):ここでは、学生に身につけさせる知識・能力との対応関係等を示した科目区分の下に授業科目を構成し、科目区分間、授業科目間の関係性や履修順序(配当年次)等を示すことにより、授業科目の体系的な履修を促すことを目的とした図を指す。ナンバリング:カリキュラムの体系性を示すために、各授業科目に意味づけされた番号を付与すること。図1・2 本文内数値はすべて文部科学省「平成30年度の大学における教育内容等の改革状況調査結果」より抜粋能動的学修(アクティブ・ラーニング)を取り入れた授業を実際に行っている能動的学修(アクティブ・ラーニング)を効果的にカリキュラムに組み込むための検討を行っている能動的学修(アクティブ・ラーニング) を取り入れた授業科目の増加を図る履修系統図(カリキュラムマップ、カリキュラムチャート)の活用ナンバリングの実施 勤労観・職業観の育成を目的とした授業科目の開設資格取得・就職対策等を目的とした授業科目の開設今後の将来の設計を目的とした授業科目の開設 企業関係者、OB、OG 等の講演等の実施インターンシップを取り入れた授業科目の開設 キャリア教育を教育課程内で実施している大学具体的な取組内容93.5%73.8%71.9%76.1%53.5%97.8%87.4%85.1%81.6%80.5%79.2%※「学修」:単位を取るには、授業と同じ時間を予習と復習に充てる必要がある、という考え方に基づくもの。高校の「学習」とは考え方が異なる。※31forParent 2021
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