キャリアガイダンス保護者版2021
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のサポートができそうです」 また西村先生からはこんな指摘も。「高校生は純粋。ひとつの価値観にとらわれつまずいてしまうことも多いです。大人が複数の〝ものさし〞を見せることも大切」 例えば文化祭で勉強を放棄したケース3。「文化祭を全力でやる伝統は、勉強との両立を協同作業の中で工夫してこそ。それに気づけば、互いに頼り合い触発し合った文化祭の成功は、受験へも大きな自信になったはず」 志望校を探す際も、大人の広くて射程の長い視野は助けになります。第一志望校でないとダメ、ではなく、ここならこんな夢や将来、ここならこんな学び方ができると視野を広げ、希望をもてる複数の将来像を一緒に検討してみるのもおすすめです。 では、自立が進みスポーツと受験の切り替えもできたケース2なら、手を離しても安心なのでしょ 勉強しないわが子に、早く手を打つべきか、それとも自立に向け口出しを控えるべきか。そんな疑問に、西村先生は、手を離すのはまだ早いとアドバイス。「高校時代は、人生に繋がる大きな決断の時期。迷いや不安の中、自分の価値を信じてくれる存在はとても大切です」(西村先生)。 ケース1は象徴的な例。「大学の勉強は楽しく思うはず」と、お母さんがわが子の可能性を信じて辛抱強く高校中退に反対したことが、学びたい学問を見つけてやる気を取り戻す支えとなりました。 やる気を取り戻すきっかけは「勉強の目的がはっきりした」が最多(図5)ですが、それを見つける際は、「幼少時に好きだったこと、得意なことがヒントになることも。生育過程を知る保護者ならではうか。西村先生は彼の「親から意見されたことはない。しっかり逆算してやっているのを見ていた」と語った部分に注目。「自立期に適切に理解・支援され、大人への信頼を育んだ生徒は、大学や社会に出た後も周囲と良好な関係が築け、大きく強く成長することが多い」と語ります。 自立期の高校生にはそれにふさわしい支えが必要です。どんなときも「心」の手を離さず、温かく真剣に向き合っていきましょう。学習内容が難しくてつまずいたなら、焦らずに一度基礎の問題に戻れば良いのです。教科担当の先生も心配していますから、気軽に相談し、学習方法や適切な教材をアドバイスしてもらうよう、勧めてください。次の定期考査までに挽回することが大事です。一方、高校入学後、これまで好調だった生徒に起こるケースとして、中学の時ほど良い成績が取れないショックからやる気を失うことがあります。この場合は、高校と中学では、学ぶ内容も速度も集団の学力もそもそも違い、中学までの貯金だけでは通用しないことを親子で納得すべきです。集団での位置づけや勉強習慣を低く固定しないためにも、高1の1学期までに再スタートを図りたいところです。高校では、まだ目標が見つかっていない1年の段階から、幅広い教科で地味で辛い基礎固めが始まります。この勉強の辛さを、保護者も理解してあげることが大切です。お子さんには、やがて夢を見つけたとき目指せる状態にあるための大事な土台づくりだと知ってほしい。各自の目標が見えてくるまでのこの地味で辛い基礎固めの時期は、好きな仲間と勉強の愚痴を明るく言い合い集団の力で階段を上っていくほうが良い。保護者としても、競争的な発想で追い詰めるより、所属集団で少しでも居心地良い関係が作れるように応援してあげたいところ。人間関係のトラブルなどを抱えているようなら、早めに確認し、取り除く支援をしていきましょう。役に立たないと決めつけず、それが本人にとってどんな意味をもつのか、将来どんな形で活きてくるのか考えることが大切。そのうえで、勉強とのバランスの取り方も早いうちから本人と話し合っておくと良いでしょう。夢中になった体験を活かす場合、推薦系の入試になることが多いので、欠席日数や未履修・未修得などの推薦・進級規定の確認も必要です。部活動の場合は、放課後や土日に学習時間が取れない分、1日6時間の授業時間を誰よりも集中することが大切。引退後のスパートを助ける土台になります。一方、明らかに本人の成長や学校生活に支障をきたすことに夢中になっている場合は、制止や一定の条件下で認めるという調整も必要です。ここまでのエピソードやアンケート結果から読み解けるポイントについて、西村先生にアドバイスいただきました。図5やる気を取り戻したきっかけで大きかったもの(複数回答)50for Parent 2021

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