それをした人としなかった人とでは、人生も大きく変わってくるかもしれません。 子どもが自ら学び、成長し続けるためには、保護者の期待や応援が大切です。しかし、期待はときにプレッシャーになることもありますし、高校生ともなると、保護者の応援を疎ましく感じるかもしれません。 であれば、今まさに世の中で起こっている事柄について「あなたはどう思う?」と聞いてみることだと野田先生は言います。「今のコロナの状況どう思う?」「ワクチンの仕組みってどうなの? お母さんにわかるように教えてよ」など、身近なことでいいのです。解決法などわからなくても、何が問題か、課題を見つけることが大事です。会話をきっかけに世の中の変化に敏感になり、自分で考え、意見を言葉にする力を、親子共に育てていきましょう。 そして、保護者自身が学び続ける姿勢を子どもに示すことも重要です。自らのキャリアについて語るのもよいでしょう。「キャリアというと過去の実績のことだと思いがちですが、本来は、『これから自分はこうしたい』という未来志向であるべきです」。例えば、今は子育てで忙しくても、「これから資格を取ってこんな仕事にチャレンジしたい」と夢を語り、「働くことを通して志(will)を実現していく成長プロセス」を保護者自身が示すことが、何より子どもの心に響くのではないでしょうか。の役に立つのかわからない」と思いながら勉強をするのは辛いものです。でも、「10年後こうなっていたい」という目標があれば、「だから今はこれをしよう」と、前向きに目の前の勉強に取り組むことができるでしょう。ゴールを設定して今やるべきことを考える方法を「バックキャスティング」といい、変化が速い今のような時代には、過去の蓄積を基に未来を考える方法(フォーキャスティング)よりも多くのことを速く実現できるといわれています(6ページ図参照)。 目標は一度設定したら終わりではなく、時代の変化を先取りし、そのときの状況や自分の能力に合わせて軌道修正していきます。「一度このような考え方を身につけておけば、社会人になってからも、20代、30代、40代と、目標を定めて学び続け、成長していくことができます。成長すればそれだけ周囲の期待も高まり、それがさらに、成長のモチベーションにつながる好循環が生まれます」。保護者自身が学び続ける姿勢を見せる テレビドラマで臨床検査技師という仕事を知り、顕微鏡でがん細胞を見つける職人技に憧れました。臨床検査技師を目指し、猛勉強して大学進学しましたが、そのころには、ドラマで見て憧れた職人の手仕事の多くはロボットがする時代になっていました。学ぶ目標を失い、本を乱読していたときに原研哉氏の『デザインのデザイン』という本と出会い、「人生が二度あるなら美大で学びたい」と思うほどデザインの世界に傾倒しました。でも、両親にも申し訳なく、留年することなく卒業。その後、外資系の医療機器会社に就職。しかし、周囲は院卒生や帰国子女ばかり。取り柄のない私は営業で成果を上げるしかないと思い、2年でトップセールスに。それでも、英語ができない私にグローバルで活躍できるチャンスは回ってきません。20歳のときに糖尿病を発症し、「自分が思ったよりも長生きできないかも」と思っていたこともあり、夢を先延ばしにせず、美大に挑戦しようと決意しました。周囲は皆、大反対。母だけは「あなたならできる」と励ましてくれました。 働きながら美術予備校に通い26歳で武蔵野美術大学に入学。18歳の子たちと肩を並べていくらがんばっても絵の技術ではかなわない。そこで彼らとは違う武器を身につけたいと、奨学金で留学。そこで得た成果は、デザインの知識や技術以上に、学ぶことに対する価値観の違いでした。留学先のドイツでは、何度も大学に入り直し複数の学位をもつ人や社会人になっても大学院で学ぶ人が多く、日本では「無謀だ」と笑われた私の経歴を皆、「素晴らしい」と応援してくれたのです。 美大卒業後は、身につけた私ならではの「医療」と「デザイン」をテーマに起業しました。今は健康を管理するアプリやイベントなどの企画・制作をビジネスにしていますが、今後はそれに食を加え、医療×デザイン×食のビジネスを展開していきたい。そのために、イタリアの大学で食について学ぶつもりで準備中です。「あなたならきっとできる」と応援し続けてくれた両親にはとても感謝しています。トリプル・リガーズ合同会社代表丸山亜由美さんケーススタディ ❷丸山さんの年表photo:©2020 Taniguchi Daisuke8forParent 2021
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