学習指導要領で示された「育成すべき資質・能力の三つの柱」と「学習の基盤となる資質・能力」働かせていくかを決定づけるのが、〝学びに向かう力・人間性等〞です。この力が育っていないと、たとえ学生時代には成績が良くても、社会に出てからは自分で考えられない・決められない・行動できない指示待ち人間になり、社会の変化への対応が難しくなってしまいます」(板倉さん) では、高校の教育や学びは、具体的にどのように変わるのでしょうか。新しい学習指導要領には、資質・能力を育むために「どのように学ぶか」についても明示されてし合う動的なものへと、保護者の時代からは大きく変わります。「先生が生徒に知識や技能を教える一方向的な授業から、生徒が自ら目標や課題を設定し、仲間と対話・協働し、自らの学びを振り返りながら深めていく授業へと変わっていく」と前田先生。グループワークなどは手段の一つであり、先生の解説を聞いたり、一人で調べたり考えたり内省した 個人として豊かに生きるため、そして社会をより良いものにしていくために求められる資質・能力が変化しつつあることを受け、国の教育指針である学※用語解説参照習指導要領が改訂され、高校では今年度より実施されます。改訂の要点について、板倉さんは次のように説明します。 「最大のポイントは、これからの時代に必要な資質・能力を〝三つの柱〞に整理し、具体的に示したことです。また、学習指導要領に示されている内容は、OECDの発信などと重なる部分も多く、社会や経済の方向性ともピントが合っています。教育の方向性と社会や経済の方向性のギャップがなくなってきているというのは、特筆すべきことです」 今回の改訂で明示された「資質・能力の三つの柱」は、生きて働く「知識・技能」、未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」、そして学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」です。特に注目したいのが、「学びに向かう力・人間性等」。今後の高校教育のカギとなる要素です。 「〝知識・技能〞、〝思考力・判断力・表現力等〞をどのような方向性でいます。それが、「主体的・対話的で深い学び」です。学習者が能動的(アクティブ)に学ぶという意味から、「アクティブ・ラーニング」とも言われます。 授業はこの視点に基づいて組み立てられ、知識や技能の習得にとどまらず、それを活用する学びが軸となります。授業風景も、黙って先生の話を聞く静的なものから、仲間と活発に意見を交わ新しい高校教育のカギは、「学びに向かう力・人間性等」実社会の課題を探究する生徒が主人公の学びへ【学習指導要領】全国どこででも一定水準の教育を受けられるよう、文部科学省が定めているカリキュラム編成の基準のこと。およそ10年ごとに改訂される。前文には、「これからの学校には、一人一人の生徒が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値ある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる」とある。【OECDの発信】国際機関であるOECD(経済協力開発機構)では、2030年以降において子どもたちに求められる資質・能力やその育成法を検討する「Education 2030プロジェクト」を進行中。持続可能で幸せな社会を創造するためには、「知識・スキル・態度および価値」を核に「新たな価値を創造する力」「対立やジレンマに折り合いをつける力」「責任ある行動をとる力」といった資質・能力が求められることなどを提示している。【アクティブ・ラーニング】学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」とされる。学ぶことに興味・関心をもち、仲間と対話を重ね協働しながら取り組むことで理解を深め、学習活動を振り返って次につなげるという、学習者主体の能動的な学びを意味する。【探究】生徒自らが課題を設定し、解決に向けて情報や知識を収集・整理・分析したり、周囲の人と意見を交わしたり協働したりしながら進めていく学習活動のこと。新学習指導要領では探究学習を重視しており、従来の「総合的な学習の時間」が新たに「総合的な探究の時間」となるほか、「古典探究」「理数探究」などの科目も新設される。用語解説10for Parent 2022
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