大学入試が変わるなか、進路選択に対する考え方も変えていく必要があります。高校生の子をもつ保護者がまずすべきことは、「大学選びの基準を改めて考えること」だと倉部さんは訴えます。 「コロナ禍により社会が短期間で激変したように、これからは変化がより激しい時代になります。自分たちの頃はこうだったから…は通用しない時代なんです。進路選択においても、より偏差値が高い大学、無名な大学よりもみんなが知っている有名大学が良いというのは、もはや古い〝ものさし〞です。一般的に〝良い大学〞とされている大学が、わが子にとって〝良い大学〞であるとは限りません。大事なのは、マッチングの意識。偏差値や知名度といった世間の評価だけではなく、本人が望む学びが得られるかという視点を最優先していただきたいと思います」 マッチングがより重要になってい 各大学は、自分たちが育てたい人材像、その育成のためのカリキュラム、入学者に求める資質・能力や特性を「3つのポリシー」として明示しており、入学者選抜もそれに従って設計しています。その内容はいわば、「こんな学生に入学してほしい」という大学からのメッセージであり、そこには大学の個性・特性が反映されるのです。 冒頭で述べたように、近年の入学者選抜は「総合的かつ多面的に評価」する傾向が強まっています。下に挙げた立命館大学や産業能率大学の例のように、共通テストの成績で基礎学力を測りつつ、自校が入学者に求める資質・能力や特性を測るための個別試験を実施するというケースが、選抜方式を問わず増えています。また、早稲田大学のように、高校3年間の経験や学びの履歴(ポートフォリオ)などの提出を求める動きも出てきており、「結果だけでなくプロセスも含めて総合的・多面的に評価するという流れは、今後も加速するだろう」と倉部さんは言います。る背景には、大学教育の多様化があります。近年は、各大学が特色ある教育を展開しており、同じような学部名、偏差値でも、教育の方針や内容はさまざまなのです。例えば、図2のように2つの大学の経営学部を比べてみると、それぞれゴール(育てたい人材像/DP)が異なるため、教育の内容(カリキュラム編成・実施方針/CP)も求める学生像(入試の方針/AP)も異なります。そして、どちらが望ましいと思うかは、人それぞれなのです。 「大事なのは、A大学とB大学の〝違い〞を知り、自分が望むものにより近いものを選ぶこと。偏差値や学部名だけで選んでいては、入学後にこんなはずじゃなかった、思っていたのと違うと、ミスマッチ大学選びの〝ものさし〞を、わが子仕様の〝ものさし〞に【一般選抜】大学の入試方式のうち、特別選抜(総合型選抜、学校推薦型選抜、社会人、帰国子女などの各種選抜)を除いたものを指す。国公立大学では2月下旬に前期日程、3月初旬に後期日程の試験が行われ(一部の大学では中期日程もあり)、各日程1校のみに出願できる。また、私立大学では主に1月下旬〜2月(一部の方式では3月にも実施)にかけて試験が行われる。 試験にスマートフォンやタブレット端末、ノートパソコン、電子辞書などの持ち込みが可能(※)ということで注目を集めたのが、一般選抜「未来構想方式」。5教科型(学費減免)と3教科型があり、いずれも共通テストの受験が必須。3教科型では共通テストの得点率50%(250点)が受験資格になる。個別試験は出願時に提出する「事前記述課題」(400~600字程度)と試験日に課される「未来構想レポート」(小論文・A3 1枚程度)からなり、「自分の考え」を書くことが求められる。 国立大学のなかでも早くから総合型選抜(旧・AO入試)に力を入れ、2022年度入試では定員の約28%をこの方式で募集。例えば、「AO入試Ⅲ期」の農学部の面接試験では、面接前に農業に関する小作文を課し、面接では出願資料と小作文を参考に、農学への関心度と知識、発想の柔軟性と豊かさ、表現力、行動力、協調性などを総合的に評価する。なお、「AO入試Ⅲ期」には共通テストも課され、高い水準の基礎学力が求められる。 一般選抜、大学入学共通テスト利用入試では、全学部においてWEB出願時に「高校時代に学校内外で取り組んだ、主体性・多様性・協働性に関する経験」を100~500字で記入することが要件に(ただし、合否判定には利用しない)。また、統計学や数理的アプローチが必要になる政治経済学部では、文系であっても共通テストの「数学Ⅰ・A」を必須受験科目とするなど、大学が求める人物像や入学後の学びの実態に即した入試内容へと変わってきている。 経営学部の一般選抜「経営学部で学ぶ感性+大学入学共通テスト方式」では、共通テストで一定の成績を取ることを合格の“必要条件”としている。合否自体は、学校独自の「経営学部で学ぶ感性」問題(発想力・構想力・文章表現力などを通じて「感性」を評価する問題)で判定するが、指定する共通テスト科目の合計点数が390点(得点率65%)以上でなければ、たとえ「経営学部で学ぶ感性」問題が高得点であっても合格することはできない。用語解説※機器の持ち込みは1台のみ可能。試験中にインターネットで情報を検索することが認められているが、通話やSNS、メールなどによる外部との連絡は禁止。14for Parent 2022
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