保護者のためのキャリアガイダンス2022
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 僕がもし、自分の子どもから大学に行く意味を問われたら、「ちゃんと途方に暮れるため、じゃない?」と話すでしょう。 最近は正解がわからない時代と言われます。でも高校生までは、親や教師が「こっちが正しい」と導いてくれる。自分の頭で考える必要はありません。日本で教育を受けてきた多くの人にとって、初めて「こうしたほうがいい」と言われない時期が大学生活です。初めての自由。何をすればいいのか、誰の助言を聞いたらいいのかわからない。そこでちゃんと途方に暮れる経験をして、初めて「さあ、自分で考えて判断するしかないぞ」と思い始めます。 会社に入ったら、会社の命題がある。ちゃんと途方に暮れる時期を飛ばして会社の正解に乗ってしまい、人生後半で途方に暮れては遅いんです。 ところで皆さんは子育ての目的は何だと考えますか。 多くの保護者が「子どもを守り育てること」だと考えるでしょう。子どもを守らなければと思う気持ちは、立派な使命感です。でも、こうした答えのない問いを投げかけられて、つい「良いアドバイスや知恵のある言葉を与えなければ」と思ってはいませんか? 思い返してみてください。自分が子どもだったころ、「世界のすべてを知っている」風の教師より、「先生もわからない」と正直に言ってくれる教師を信用しませんでしたか? それなのに親になると、つい何で「正解を知っている親」をやめる作家・演出家 鴻上尚史大学に行く意味はちゃんと途方に暮れるため対話を邪魔する「使命感」もしも、わが子にこの時代に大学に行く意味を問われたら「今時、大学を卒業したからといって、将来安泰とは限らない。この不確かな時代に大学に行く意味はなんだろう?」――もし、わが子から真剣に問われたとしたら、どのように答えますか? 返答に窮する保護者の方も多いのではないでしょうか。答えのない、そして、人それぞれに異なる「大学に行く意味」を、親子でどのように対話すればいいのか。専門の異なる4名の識者の方にお話を伺い、対話のコツを探りました。取材・文/塚田智恵美答えのない「?」を対話するヒント24forParent 2022

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