保護者のためのキャリアガイダンス2022
26/64

 「大学に行く意味は?」と子どもが言い始めたら、本人が自分自身の人生を具体的に考え始めたということです。親が胸に密かにしまってきた「子どもと親の人生は別物である」ということが現実として目の前に迫ってきたのです。そのとき、親は大学には進学してほしい、それもできるだけ上のレベルを目指してほしいという「欲と期待」が頭をよぎります。しかし、受験は非常に現実的なものなので、まずは親が夢から覚めて現実に対峙しなければなりません。いつまでも諦めきれない自分の夢を子どもに託そうとする姿勢を見せると、子どもは、現実と自分の夢と親の期待がらみの夢のハザマで悩むことになってしまいます。私はといえば、現実重視で子どもたちには「行きたい大学ではなく行ける大学に行くこと」と常に話していました。 なかには、子どもが漠然と「将来が見えない」と考え進路が決めきれない場合もありますが、特に今の時代、迷っている時間はありません。来年は何がどうなっているのかわかりませんし、普通に大学入試が行われるのか確信はもてません。自らの決めた道で失敗はしたくないでしょうが、どの道を選んだら成功するのか失敗するのか、やってみないと誰もわからないのです。よく「前向きに生きよう」と言いますが、どちらが「前」かわからなくなることもあります。とにかく、まずは一歩踏み出してみないと。悩みながら同じ場所にいては、見える景色はずっと変わりません。 例えば、具体的な職業を決めて専門学校に通うべきか大学に進むべきか悩んでいるのなら、大学に進んで、ダブルスクールでがんばるほうがいいと思います。高校生は家と学校を往復しただけなので、視野が狭く経験値が低いのです。具体的な職業にすぐ就きたいと思っても、やはり視野を広げるために範囲の広い学問をする大学に進むことをお勧めします。 私は、子どもたちにはよく自分の考えを話していました。新聞や本を読んで思ったことを「ママは、このように思うのだけどね」という言葉から話します。子どもたちの意見もよく聞くようにし、決して否定することはしませんでした。子どもたちは、親の知ることのできない未来を生きていくわけですから、親の考えを基準にしてほしくなかったからです。親の考えを「世の中」にせず、対等に語り合える関係を築いていきたいですね。まずは親が夢から覚めましょう3男1女が東大理Ⅲに合格 佐藤亮子さとう りょうこ●津田塾大学卒業後、高校の英語教師として2年間教壇に立つ。結婚後、夫の勤務先である奈良県へ移り、以降は専業主婦。3男1女が東京大学理科三類(医学部)に進学。講演活動やメディア出演を行うほか、「浜学園」アドバイザーを務める。ここから対話をはじめよう子どもが漠然と悩むのって、大体は成績が下がってきたとき。だったら「先のことはさておき、とりあえず次のテストで良い点とらない?」って提案してもいいと思う。例えば教科書のコピーや、文系科目のノートの整理くらいは、親でも手伝えるのでは。ひとまず目の前のことを、一緒にがんばってみたらどうでしょう。勉強する子になる100の習慣佐藤亮子/文藝春秋小学生から中高生までの子育て期間全般を対象に、親の悩みに応えた本。「子どもが勉強してくれない」「周囲との環境の違いをどう考えるか」など、どこまで保護者が介入していいのか迷うテーマについても明確にアドバイスされており、佐藤さんの子育て論がうかがえる一冊。まずは目の前のことを「次の中間テスト、何か手伝う?」深く考えるための1冊悩んでいる間は、同じ場所をぐるぐる回るだけ。とりあえず一歩進んでみると、違う景色が見える。だから門の前でうろうろするくらいなら、「とりあえず」受験してみたら?って、私は思います。来年も普通に大学入試があると思うな親は「世の中」ではない26for Parent 2022

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る