保護者のためのキャリアガイダンス2022
33/64

ための「キャリア教育」も、大学がカリキュラムのなかで力を入れるようになっています。実際に教育課程内で実施している大学は98%にも上り、インターンシップなどを単位を取得させる正式な授業科目として開設する大学が8割に迫っています(図2)。 内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)に置かれた「教育・人材育成ワーキンググループ(WG)」は昨年12月の中間まとめで、Society5.0(超スマート社会)と呼ばれる未来社会像を実現するために、政府全体を挙げて取り組む必要性を強調しました。 そこでは、デジタル技術も最大限活用しながら、社会や民間の専門性やリソースを活用する教育への転換を目指しています。高校で既に先行実施されている「総合的な探究の時間」に代表される探究学習や、理数系にリベラルアーツ(教養)を加えた「STEAM教育」の必要性も強調しています。 特に、早くから文系と理系に分けてしまう「文理分断」や、理数系の学部に進む女子が少ない「ジェンダーの偏り」を問題視しているのも、多様性から生まれるイノベーション(革新)の妨げになるからにほかなりません。特に、理数系は女子に向かないという保護者や学校、社会の「ジェンダーバイアス」(性差の偏見)にも注意を促しています。 イノベーション人材を輩出すべき大学も、そうした多様性の重視がますます進んでいます。女子学生を増やそうと努力する理数系大学・学部も続出しています。 このように大学は、保護者世代と比べて変化の一途をたどっています。「昔の名前」や偏差値だけで大学選びをする時代は、過去のものになりつつあると言っていいでしょう。 一般社団法人全国高等学校PTA連合会(高P)とリクルートの共同調査では、大学のAPを「知っており、個別大学について調べたことがある」との回答は高校2年生の段階では18%にとどまっていますが、受験校を具体的に検討する際にはぐっと高くなることが予想されます。19年の図1 カリキュラム編成上の工夫の具体的な取組図2 教育課程内での「キャリア教育」の実施状況高校も大学も多様性を重視するように高校3年生対象の調査でも実際APを認知している割合は85%に上り、うち「名前も意味も知っており、個別大学も調べたことがある」は51%となっていました(図3)。 さらに、進路選択に将来、影響を与えるような調査を、文科省が行おうとしています。「全国学生調査」というもので、各大学の教育改革を学生目線でチェックしてもらおうというものです。スマートフォン(スマホ)から10分程度で回答できる、というのも今風です。 質問項目では、先に紹介したようなALがどのくらい行われているかや、大学教育を通じて身についた具体的な知識や能力を尋ねています。 現在は試行段階(1〜2月に第2回を実施)のため、個別の大学や学部の結果を公表するかどうかは、各大学の判断に任されています。一方、本格実施の段階に入れば、各大学を比較できるよう一覧にしたい考えです。そうなれば、大学選びの有力な資料にもなることでしょう。 コロナ禍で、ますます改革が加速しそうな大学教育。少なくともAPをはじめとした三つのポリシーを手掛かりに、自分にふさわしい大学がどこかを選ぶ目も求められます。保護者もこれらの情報に注目していきたいところです。図1・2 本文内数値はすべて文部科学省「平成30年度の大学における教育内容等の改革状況調査結果」より抜粋リクルート進学総研 高校生の進路選択に関する調査「進学センサス2019」より能動的学修(アクティブ・ラーニング)を取り入れた授業を実際に行っている能動的学修(アクティブ・ラーニング)を効果的にカリキュラムに組み込むための検討を行っている能動的学修(アクティブ・ラーニング) を取り入れた授業科目の増加を図る勤労観・職業観の育成を目的とした授業科目の開設資格取得・就職対策等を目的とした授業科目の開設今後の将来の設計を目的とした授業科目の開設 企業関係者、OB、OG 等の講演等の実施インターンシップを取り入れた授業科目の開設 キャリア教育を教育課程内で実施している大学具体的な取組内容93.5%73.8%71.9%97.8%87.4%85.1%81.6%80.5%79.2%保護者も教育改革の進展をわが子の大学選びの情報に図3 「アドミッション・ポリシー」の認知度(大学進学者/単一回答)認知・計85.0%51.1%17.4%16.5%名前も意味も知っており、個別大学について調べたことがある名前も意味も知っているが、個別大学について調べたことはない名前のみ聞いたことがある33forParent 2022

元のページ  ../index.html#33

このブックを見る