保護者のためのキャリアガイダンス2022
7/64

知識だけで定年退職まで走り抜けるのは困難です。「学校を出て就職したらそこで終わりではなく、社会に出てからも大学や大学院で学び直したり、資格取得のために勉強するなど、学び続けることが大変重要です」 だからこそ、「高校・大学のうちにぜひ身につけておいてほしいのは、自ら学び続ける習慣です。自分で学ぶ力をつけておけば、この先世の中がどんなに変化してもそれほど苦労しません。AIに仕事を奪われるのではと不安視している人もいますが、AIは変化の一つに過ぎません。AIなんて近い将来は米と同じくらい当たり前のものになります。であれば今からAIについて学ぶべきかと悩むよりも、いかにして学び続けるかを考えることのほうがよっぽど役に立ちます」 人生100年時代ともいわれる長寿化社会。生涯を通じて学び続けることは、仕事に必要だからというだけでなく、豊かな人生を生きるためにも必要な習慣かも識にとらわれず、〝今何が問題なのか?〞を発見し、自分の頭で新しい答え、新しい枠組みを創っていける人が、これまで以上に必要とされるのです。 学校での学びも、探究学習などのように、知識詰め込み型から、課題発見、課題解決に重きが置かれる内容に変わっています。「そんなこと大学受験に関係ないのでは、と思う人もいるかもしれませんが、むしろ、そういうことこそ、これからの社会で生きてくる学びなのです」「欧米では、『社会に出て働く↓学校に戻って学び直す』を行き来しながらキャリアを築く人が2割を超えますが、日本では2%にも達しません」。つまり、多くの日本人は、一度就職するとそこに安住し、自分の能力をアップデートしない傾向があるのです。 しかし、世の中が急速に変わるなか、就職するまでに身につけたしれません。 では、「学び続ける習慣」をつけるためにはどうすればいいのでしょうか。「絶対に必要なのは、自分で自分の可能性を信じられることです。自分は成長すると信じられなければ、人は努力して学ぼうとは思えません」 それに加えて、「周りから期待され、応援されることも必要です。いくら自分を信じても、親や先生に『おまえには無理だ』『できるわけがない』と言われたのでは学び続ける気持ちがくじけてしまいます」 さらに大切なのは、目標設定です。「今の勉強が自分の将来に何働いたり、学んだりを行き来しながら成長する自分を信じる力と周囲の期待が学びのモチベーションに 大学卒業後、食品メーカーに入社。営業に配属され、最初は小さな小売店から、実績を上げてだんだん大きな店舗の担当を任されるように。8年間営業を経験した後、商品企画やマーケティングを経て、全社的な統合戦略・組織再編の仕事に抜擢されました。会社が常に、少しがんばれば手が届く適度なプレッシャーを与え期待してくれたことが、自分の成長につながっていったと思います。 しかし、経営戦略はまったく初めての分野で、これまでの経験や知識では太刀打ちできませんでした。もっと視野を広げ、自分なりの判断軸をもちたい、そのためには学ばなければと感じていたときに、上司にすすめられ大学院で経営管理学を学ぶ機会を頂きました。36歳のときのことです。日中は会社で仕事、夜は大学院に通う生活が2年間続きました。 大学院で体系的に理論を学ぶことで、これまでの実務経験が知識として整理され、とても理解が深まりました。大学時代はあまり真面目に勉強してきませんでしたが、それは学びが自分ごとになっていなかったからだなと思います。大学院の最後の半年間で仕上げた修士論文では賞も頂きました。大学時代の成績はさんざんでしたが、自分が心から必要だと思うことなら一生懸命になれるし、結果も出せるのだと実感しました。 修士課程を終えた翌年に、ご縁があって今の会社に転職を決めました。前の会社もとても好きでしたが、今の会社の技術力やグローバルブランドを目指すチャレンジ精神に魅力を感じたからです。 現在、経営企画の仕事に従事していますが、大学院で学んだことが役立っていると日々実感します。新たな環境から学ぶことも多く、今後はファイナンスの知識もつけたいし、機会があれば海外留学もしたい。 これからは、ひとつのスキルだけでずっと通用する時代ではありません。学び続けて自分の価値を上げ、自分自身をブランディングしていく意識が不可欠になっていくのではないでしょうか。本田技研工業株式会社佐藤 功さんケーススタディ ❶佐藤さんの年表今までとは大きく変わる!?わが子の学びの“これから”を知ろう!7forParent 2022

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る