キャリアガイダンス保護者版2024
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子どもも親も、沖に出るます。1つ目は、どれだけ母が願っても、子どもたちは母の願い通りの進路を歩まなかったことです。きっと子どもたちのほうが「母の言う幸せだけが、幸せではない」とわかっていたのでしょう。何が自分の幸せなのか、そのためにどんな学びが必要なのか、自分で考え、自分で選択しました。しかしその結果、自立した今、子どもたちはとても幸せそうなのです。私が縛られていたのとは異なる価値観をもち、行動している子どもたちを見ると「これで良かったのだ」と心底思います。子育てに反省は多々ありますが、後悔はありません。それは大人になった子どもたちを見て「イイやつに育ったな」と思えるから。2つ目は、私が27年間勤めた会社を退社し、フリーランスになったことです。一社に長く勤めていると、その会社の当たり前が、まるで世界のすべてのように思えてくることがあります。また数年後にどんなポジションに就くか、どんなキャリアを歩むのかを大体予想できるため、おのずと「こうあらねばならない」と思いがちに。しかし、会社の外にえいっと出てみれば、自分が決めつけていた枠がどんなに狭いのかを思い知る経験ばかりでした。いろいろな人生があって、いろいろな幸せがある。自分の好きなことを自分で選んで生きている人たちには、自分軸で生きられる強さのようなものを感じて、尊敬の気持ちを抱きました。「こうありたい」と強い意志をもって独立したわけではない私ですが、広い世界を見て、どんどん自分が変わっていくのがわかりました。意志のあるところに道が   5   できたのではなく、人との出会いによって意志があとからついてきたのです。働き方も暮らし方も多様な時代だからこそ、〝沖に出て〟さまざまな選択肢があることを知り、世界を広げ、自分にはこれだと思うものを選び取ることができる人が、自分らしい道を切り開いていきます。保護者の皆さんの中には、子どもの幸せを思って、つい自分が信じて育ってきた価値観のなかでアドバイスをしてしまう方もいるでしょう。お気持ち、よくわかります。いくら多様な生き方があると言われても、「子どもの幸せのために」と思ってしまうと口を出さずにはいられないですよね。それでも私の経験上、そのひと言が子どものやる気を削いでしまうことは間違いないです。だから子どものために偏差値の高い大学を調べたり、良い塾を探してきたりするよりは、子どもの知らない仕事や働き方を知り、「世の中にはこんな選択肢もあるんだよ」と教えてあげるほうが良いのではないでしょうか。そして、親が子どもに「してあげる」ばかりではなく、子どもが家のために何かを「する」機会をつくるのも良いと思います。例えば洗濯物を畳んだり、トイレ掃除をしたりといった家事をやらせる。「この家の中で一人の人間として扱われている」と思えると、自立心も育っていくはず。そろそろ「手放す覚悟」が必要な時期です。でもね、手放しても、きっとお子さんは大丈夫ですよ。新しい場所に出たら、初めて見る景色に驚いた。時間の流れも時間の価値も明らかに違ったー。TBSを退社した著者が、見本も模範もないフリーの世界に出た1年を綴った日記。新しい仕事、卒母、服装、美容などについて。ジェーン・スーさんとの対談も収録。ほりい みか●1972年生まれ。アナウンサーとしてTBSに27年間勤めたあと、2022年に退社しフリーランスに。現在は、人気Podcast番組「OVER THE SUN」にパーソナリティとして出演するほか、TBSテレビ「坂上&指原のつぶれない店」などの番組やCMでナレーションを担当。forParent 202450歳で会社を辞め、母を卒業。世界へ踏み出した心境を語った1冊が発売中です。

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