僕がもし、自分の子どもから大学に行く意味を問われたら、「ちゃんと途方に暮れるため、じゃない?」と話すでしょう。最近は正解がわからない時代と言われます。でも高校生までは、親や教師が「こっちが正しい」と導いてくれる。自分の頭で考える必要はありません。日本で教育を受けてきた多くの人にとって、初めて「こうしたほうがいい」と言われない時期が大学生活です。初めての自由。何をすればいいのか、誰の助言を聞いたらいいのかわからない。そこでちゃんと途方に暮れる経験をして、初めて「さあ、自分で考えて判断するしかないぞ」と思い始めます。会社に入ったら、会社の命題がある。ちゃんと途方に暮れる時期を飛ばして会社の正解に乗ってしまい、人生後半で途方に暮れては遅いんです。ところで皆さんは子育ての目的は何だと考えますか。多くの保護者が「子どもを守り育てること」だと考えるでしょう。子どもを守らなければと思う気持ちは、立派な使命感です。でも、こうした答えのない問いを投げかけられて、つい「良いアドバイスや知恵のある言葉を与えなければ」と思ってはいませんか?思い返してみてください。自分が子どもだったころ、「世界のすべてを知っている」風の教師より、「先生もわからない」と正直に言ってくれる教師を信用しませんでしたか?それなのに親になると、つい何で「正解を知っている親」をやめるもしも、わが子にを問われたら作家・演出家 鴻上尚史「今時、大学を卒業したからといって、将来安泰とは限らない。この不確かな時代に大学に行く意味はなんだろう?」――もし、わが子から真剣に問われたとしたら、どのように答えますか?返答に窮する保護者の方も多いのではないでしょうか。答えのない、そして、人それぞれに異なる「大学に行く意味」を、親子でどのように対話すればいいのか。専門の異なる4名の識者の方にお話を伺い、対話のコツを探りました。大学に行く意味はちゃんと途方に暮れるため対話を邪魔する「使命感」この時代に大学に行く意味答えのない「?」を対話するヒント 取材・文/塚田智恵美forParent 202460
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