キャリアガイダンス保護者版2024
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金を稼げるのに」と考える高校生もいるようです。例えば高卒で社会に出れば、すぐに一定の給料をもらうことができる。大学の4年間を働く期間にまわした場合、得られる予定の額が目の前にあるのに、それを逃すと損失になる、と考える。これは将来得られる利益よりも「目先の損」が嫌だと考えてしまう気持ちが働いているから。経済学の用語では「損失回避」と言います。目先のことだけではなく、長い目で見たときの人生の便益を考えなくてはいけません。そのために 歳歳歳歳歳歳歳歳歳      大事なのは正しい情報を調べること、そして「何に対して投資をすれば生涯で最もリターンが高くなるか」と考えることです。株式投資の場合、何を買っても同じではなく「どの銘柄が一番値上がりするか?」と考えるでしょう。教育という投資でも同じです。ただ大学に行けばいいだけではない。例えば、どんな学問分野を選べば、あなたのお子さんは生涯トータルで高い利益を得られるでしょうか。ここで大事なのは「マッチクオリティ」の考え方です。マッチクオリティとは、簡単に言えば適性のこと。本人の適性に合った学問分野で学ぶことが、教育による成果を高くするという研究もあります。ところが高校3年生の段階で自分の適性に合った道を、確信をもって選べる人は少ないでしょう。ですから大学は、さまざまな分野の講義や探究活動を通じて、自分は何がやりたいか、何に向いているかと試行錯誤し、興味・関心を追究しながら、自らの適性を知る機会でもあるのです。大学に行っても、結果的に回り道や試行錯誤をするかもしれない。それは一見すると非効率に見えるでしょう。しかし、若いうちに試行錯誤することによって、より適性に合った仕事に就くほうが、生涯トータルで見れば得があるのです。回り道のなかで、何がその子を最も伸ばしてくれるのか、ぜひ親子で一緒に見極めてください。進路観や働き方は、親世代のころと比べて急速に変化しています。高校生のわが子とどこまで関わるべきか、迷う方も多いでしょう。 「高校生と保護者への意識調査」※では、意識の変化が示唆されています。進路の話をするときに保護者がよく使う言葉として「勉強しなさい」「とにかくいい大学に入りなさい」といった回答は減少傾向にあり、「自分の好きなことをしなさい、やりたいことをやりなさい」などの増加が見られました。一方で、高校生側は「好きなことをしなさい、だけで終わらないでほしい」「進路について自分よりも詳しく情報収集してほしい」などの回答が増加。親に関わってほしい気持ちがうかがえます。子どもと一緒に考えながらも、親の答えを押し付けはしない…一見難しくも思える対話のヒントが、4名のお話のなかには随所に見られたのではないでしょうか。親としての責任感や不安、捨てられない期待。そうした「対話を邪魔するもの」を少しの間だけ脇に置いて、親子でフラットに「どう思う?」と話してみてはいかがでしょう。本記事をぜひ、対話のきっかけにご活用ください。ここから対話をはじめよう深く考えるための1冊「自分の興味関心は? 今、大学で学ぶなら?」親のあなたが学びたいことを話してみる子どもの興味関心は身近な人、特に親から影響を受けることが多いものです。私自身、「教育」経済学を専攻したのは、親が教員だったことも影響していると思う。親のあなたが何に興味をもっていて、今、大学に行くとしたら何を学びたいか、子どもと話してみると、子ども自身の興味関心を一緒に考えるきっかけになるかもしれません。65「学力」の経済学図 賃金カーブ(男子、企業規模計、所定内給与額)2016年60050040030020010040-4445-4950-5455-5960-64中室牧子/ディスカヴァー・トゥエンティワン「ゲームは子どもに悪影響か?」「子どもはほめて育てるべき?」「勉強させるためにご褒美で釣るのはいけない?」といった教育のテーマを経済学的手法で分析し、解き明かした一冊。根拠のない教育論、個人の経験や思い込みから離れて、データを基に教育の効果を考えたい人におすすめ。for Parent 2024※「高校生と保護者の進路に関する意識調査2023」一般社団法人全国高等学校PTA連合会・株式会社リクルート合同調査(千円)北條雅一(2018)「学歴収益率についての研究の現状と課題」日本労働研究雑誌 図2Bより改変大学・大学院卒高専・短大卒高校卒中学卒20-2425-2930-3435-39「誰も答えを知らない」、そこから真の対話は始まる

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