れが実現できる業界、企業はどこかと情報を集め、理解を深め、選び抜いたという経験が、次の選択時に活きてくるのだと言います。そして、この最初の選択のプレ体験となるのが、高校卒業時の進路の選択。「進学先選びでも、偏差値や通いやすさではなく、やりたい、学びたいという動機ある選択をすることが非常に重要」と訴えます。この「動機ある選択」の重要性については、後半で詳しく紹介します。選択の回数が増えていることに加えて押さえておきたいのが、職場環境の変化です。2015年以降、若者雇用促進法、働き方改革関連法、パワーハラスメント防止法などが次々と施行され、大企業を中心に企業が構造的に変化しました。働きやすさの向上というメリットがある一方、変化に伴う課題も浮上しています。 「労働時間が厳しく管理されるようになって残業が減り、飲み会や社内交流イベントなど業務時間外の活動にも制約が生まれ、コミュニケーションのあり方が根本的に変わりました。また、ハラスメントの観点から上司から部下へのフィードバックの頻度が下がり、一度も叱責された経験がないという新入社員も増えています。仕事は就業時間内に終わり、理不尽なことを言う上司や先輩もいない〝ホワイト〟な職場が増えるなか、課題になっているのが若者を育てる力の低下です。かつては主に大手企業が担っていた若手の育成の機会が減ってきているのです(図2・3)。育てても辞めてしまう、つまり、教育コストに対するリターンが低いのであればコストカットしようという考えが、背景にあるのだと思われます」かつては、大手企業が育てた人 9材が転職市場を通して中小企業に供給される、という構造がありましたが、それも崩れつつあると言います。では、大企業が育てないのであれば、誰が若者を育てるのでしょうか?この問いに対して古屋さんは、「若者は自分で育つしかない状況にある」と答えます。 「若い世代のライフに占める仕事の割合が減り、自由に使える時間が増えています。副業・複業、起業準備、資格取得の勉強、セミナーへの参加から推し活(好きなアイドルなどを応援する活動)などの趣味まで、やりたいことをやりやすくなっている一方で、アクションを起こす人とそうでない人の間に大きな差がつくようになっています。二極化というよりは、多様化している、というのが実情でしょう。長時間会社に拘束され、会社に育てられた時代には、意識が高かろうが低かろうが否応なく成長機会が与えられており、ある種の平等性がありました。それが今、なくなりつつあるのです」では、アクションを起こす人と起こさない人の違いは、どこにあるのでしょうか。古屋さんは、「こ会社はもう育ててくれない。若手の成長に個人差が出る高校・大学時代の経験が、就職後の意識・行動に影響※1 新規大学卒就職者の3年以内離職率(厚生労働省)より。for Parent 2024図2図3
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