大学の約束2016-2017
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7考える遊び場進化する大学のコミュニティスペース探訪東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構建物内の至るところに黒板が。そこに書かれた無数の数式が、研究者どうしの活発な議論を物語る3階から5階までを螺旋階段状の廊下が繋いでいる。建物内を3周すれば、77ある研究室をシームレスに辿ることが可能だPhoto:大平晋也Text:東 雄介 カブリ数物連携宇宙研究機構は、文部科学省の「世界トップレベル研究拠点プログラム」に採択された拠点の1つ。世界各地から集まった数学者、物理学者、天文学者が連携し、宇宙の起源や宇宙を構成する暗黒物質(ダークマター)といった謎に迫る。この建物は、そんな異なる分野の専門家による「融合研究」を促すべく設計されたものだ。例えば、四角形の棟の外周に配された77の研究室を螺旋階段状の廊下で繋いだのもそのための工夫。ときに専門間を隔てる壁になるフロアという概念は、ここには存在しない。 建物の3階、中央には対話空間となるフリースペースが広がる。日夜研究に専念できるようにとの配慮から研究以外の義務もほぼなく、海外からの研究者のために銀行口座の開設や携帯電話の契約などの〝よろず相談〞を引き受けるサポートデスクも設ける同施設だが、機構長である村山斉特任教授は1つだけ義務を課した。「午後3時には必ずフリースペースに降り、ティータイムに参加すること」。彼ら理論系の研究者は〝議論命〞。コーヒー片手に雑談していれば、誰からともなく議論が始まるというわけだ。 例えば何気なく天文学者が口にした疑問に、数学者や物理学者が仮説を述べるといったこともあった。この会話を起点とし、通常より30倍も輝いていた超新星の増光の謎を明らかにした論文などで大きな成果があがっている。専門も国籍も異なる研究者たちだが、彼らには数式という共通言語がある。フロア中央の柱にも「宇宙は数学の言葉で書かれている」との文字が記されていた。かのガリレオ・ガリレイの言葉である。天文学者の疑問に、数学者と物理学者が仮説で答えるティータイム

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