仲間同士でコミュニケーションをとる生物は多いですが、「言語」をもっているのは人間だけです。人類の先祖と考えられるチンパンジーやサルさえ、言葉を発することはありません。言語は、人間という種がもつ固有の「人間語」ともいえるでしょう。世界には約6000種もの言語があるといわれ、それぞれに文法があります。その違いに注目が集まることが多いですが、人間語であるかぎり、そこには共通の特質があるはずです。たとえば、おおむねどの言語にも動詞や目的語にあたるものが存在し、その並べ方は動詞+目的語か目的語+動詞の2種類しかありません。あらゆる言語の文法がもつ共通点を探れば、人間が話す言葉の本質が分かり、私たちの遺伝子の中にある「言葉のもと」が解明できるかもしれません。それが、私の取り組んでいる研究テーマです。
人が話す言葉を「人間語」とするならば、英語や日本語などの言語は「人間語の方言」のようなものです。
小野先生の担当科目は『言語の仕組み』や『言語の成り立ち』など。いずれも、英語だけでなく、日本語やドイツ語など、さまざまな言語の根底に潜んでいる「真の文法」の解明を目的にしています。このほか、英語とフランス語を同時に学ぶ『二言語同時学習』も担当。この授業は、フランス語学科の教員や学生との混成クラスで、それぞれの文法・発音・語彙の類似性や相違点を探るという内容です。「言葉の本質を理解すれば、母語話者の感覚に近づける」と考える小野先生。言語学を学ぶことは、語学力を向上させることにもつながるのです。
苦手意識をもつ人も多い英文法。『言語の仕組み』は、その奥深い魅力に気づくことができる授業です。
私は大学3年生のときに言葉の本質を探る「生成文法」と出会い、研究を続けています。好きなことはいくらやっても飽きないし、疲れないもの。そんな宝物と出会うため、自ら進んでいろいろなことに挑戦してください。
多くの著作を手掛けている小野先生。左は『英語学・言語学用語辞典』(共著/開拓社/2015)。
専門/言語学(英語学)、生成文法
略歴:京都外国語大学大学院、San Francisco State University大学院修了。マサチューセッツ工科大学言語学・哲学科にて客員研究員を務めた。NHK ETV8文化ジャーナル『チョムスキー氏に聞く』(1988年11月18日NHK教育テレビ)において、生成文法を提唱した言語学者ノーム・チョムスキー教授のインタビューと解説を担当。著書多数。
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