研究テーマは、アロマセラピーと国際保健。異文化の中で行う医療は、必ずしも西洋医学に基づくものばかりではありません。祈祷、腹部に特定の植物の葉を貼るなど、文化独自の形があります。青年海外協力隊の活動でラオスへ派遣された当時、私は、西洋医学こそが一番だと考えていました。しかし、日本の物差しでみていたら現地の人々を救うことはできないと気づかされたのです。そこで興味をもったのが、「伝統医学」。西洋医学以外に「伝統医学」や「相補・代替医療」がありますが、アロマセラピーもこの一種。オイルの香りや手を使ったケアで痛みを緩和し、心を落ち着かせるのです。その精神性はそのまま看護の心につながるものだと私は考えます。人の手は、自己も他者も癒せる魔法の道具。看護師の手の力を活かした看護ケアを学生にも伝えたいですね。
派遣当時のラオスは衛生状態が悪く、寄生虫起因の腹膜炎が頻発。これを改善するため健康教育に着手しました
山本准教授の担当は「基礎看護技術」。より臨床現場に近い状況を設定したシミュレーション演習を積極的に取り入れ、看護行為を行い、行動の意味づけを振り返ることでよりよいケアを考える教育が特徴です。自ら学び、根拠をもって看護実践ができる看護師を育成するため、学生には手順ではなく原則を教えます。例えば足浴を行う時。麻痺の有無や、座ることができるかどうかといった患者の状態によって、同じ足浴でも方法は異なります。患者の個別性に合わせるとはどういうことか。学生の考える力を育むため、山本准教授は常に問いかけます。
「なぜ、この方法がいいと思ったの?」一つひとつの手順の意味を考える習慣をつけるための問いかけです
実習中、無意識に素晴らしい看護を実践する学生がいます。例えば、患者さんが苦しそうな時、そっと背中に手を添える。こうした行動は「手当て」、看護の本質です。人を思いやる心は最も大切な資質だと私は考えます。
青年海外協力隊の活動を機に、ラオスの魅力に惹き込まれたという山本准教授。「ラオスは第二の故郷です」。
専門分野/基礎看護学
略歴/総合病院で看護師として勤務し、2000年に青年海外協力隊の活動でラオス人民民主共和国へ派遣される。帰国後、関西医科大学附属病院で勤め、2006年より後進の育成のため教壇に立った。青森県立保健大学助手・助教、日本赤十字広島看護大学講師を歴任し、2016年より現職。修士(看護学)、博士(健康科学)。
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