肥満の原因の一部とされる「肥満遺伝子」について研究しています。近年、食文化の欧米化や運動不足によってエネルギーの摂取・消費のバランスが悪くなり、肥満となる人が増加しています。摂取エネルギー過剰は「過食」、消費エネルギー不足は「運動不足」により生じますが、摂取エネルギーと消費エネルギーが同程度であっても、肥満になる人とならない人がいます。この「体質」に関係するのが肥満遺伝子です。肥満を規定する遺伝子の塩基の違いや、種類によって肥満になりやすいかどうか、または肥満のタイプが異なります。肥満遺伝子のタイプを特定し、体重や血圧、血糖値、脂質等の経年変化を追うことで個人ごとの健康指導に役立てることが可能になり、ひいては肥満に起因した生活習慣病による医療費の削減にも寄与できるのではないかと考えています。
遺伝子研究の端緒は老化の誘因となる「酸化ストレス」。症状の一つである肥満への気づきから始まりました
肥満遺伝子は現在までに50種類以上の遺伝子が候補として報告されています。このうち、陶山教授のゼミでは日本人に多く、肥満に影響を与えると考えられている4種類の遺伝子に着目し研究を進めています。「これらの1塩基多型の有無と肥満のタイプ(内臓脂肪型、皮下脂肪型)、体型(リンゴ型肥満、洋ナシ型肥満、バナナ型肥満)と関連させることにより、学生が興味をもって研究に取り組めるよう工夫しています」と陶山教授。また、遺伝子という大切な個人情報を扱うことから、検査情報の管理の徹底や倫理面の指導にも力を入れています。
食欲の調整に関連する肥満遺伝子を研究。遺伝子別に食欲を刺激するホルモンの濃度の差について調べています
人体の仕組みはまだ分からないことが多く、今後も多くの発見や新しい測定法の開発が進むことでしょう。臨床検査技師は、そんな渦の真っ只中で常に気づきを得ながら成長し続けられる、非常にやりがいのある仕事です。
授業で心がけていることは「視覚的な分かりやすさ」。毎時間配布する資料は、すべて陶山教授の手作りです
専門分野/免疫・輸血学
略歴/川崎医療短期大学臨床検査科を卒業後、臨床検査技師として健診業務に従事する。生体肝移植の黎明期に、島根大学医学部附属病院輸血部にて該当患者の免疫・輸血検査を担当。免疫・輸血学に対する関心を深めたことをきっかけにさらなる学びを修め、認定輸血検査技師となった。この他I&Aインスペクター、NST専門臨床検査技師、POCTコーディネーター等の資格を活かし多くの学会で活動中。博士(医学)。
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