私の専門分野である「身体障害領域の作業療法」。その中でも、「対象者を介護するご家族や、介護者へのサポート」に強い関心を寄せています。加齢や病気の後遺症などにより、介護を要する方の支援に取り組むご家族や介護者は、さまざまなストレスに直面しています。そのような方々について「どんな活動に困っているか」「どんな想いで、その活動や介護を行っているか」を理解し、対象者と介護するご家族・作業療法士の三者が、同じ目標に向かって、積極的に作業療法に取り組むためのシステム構築をめざしています。現在取り組んでいるのは、目標設定や目標ごとの重要度を可視化することです。これまでは作業療法士個人の経験値や感覚によって判断されていた部分を、視覚化・一覧化し、客観的に評価できるような仕組みづくりにつなげたいと考えています。
小野先生は「臨床基礎実習AI」「運動学実習」などを担当。その授業は、対象者の生活をより広い視野で捉える力を養うための工夫が随所に凝らされています。学生が対象者の生活に対して興味や疑問を持てるよう、学生自身が当事者となったことを想定し、考えるための場面づくりを実践。高齢者の動きを模擬的に体験したり、臨床で用いられる質問用紙で生活を振り返ることで、当たり前のようにできていたことが実は複雑なメカニズムで行われていることに気づくとともに、自分たちを取り巻く環境や制度に対して考えるきっかけにもなっています。
作業療法士は、対象者の自己実現のために「どうしたらその目標が実現できるか」を考え、必要な環境を整えるやりがいある仕事。対象となる方々一人ひとりと深く関わることで、自分自身の人生観も大きく広がりますよ。
専門分野/作業療法(身体障害領域)
略歴/川崎医療福祉大学医療技術学部リハビリテーション学科(現:リハビリテーション学部作業療法学科)を卒業後、財団法人操風会岡山リハビリテーション病院に勤務した。2011年、川崎医療福祉大学医療技術学部リハビリテーション学科に助教として着任。後進の指導に携わりながら吉備国際大学大学院保健科学研究科・博士(後期)課程にて学びを修め、現在は准教授を務める。博士(保健学)。