私が担当している「漢方薬」「生薬学」は、植物・動物・鉱物など天然由来の薬学について学ぶ科目です。現在は2つの研究に力を入れています。1つ目は植物が持つ成分の構造を変えて、新たな効果を示す化合物を見出すこと。実験と分析を重ねながらこれまでとは異なる効果を生み出し、これらの化合物が新たな治療に役立つことができたらと考えています。2つ目は、食べ物の成分を分析すること。私たちが何気なく口にしている食品にも、生薬が含まれています。例えば味噌の原料となる大豆も生薬の一つ。味噌に含まれている成分がどのような効果をもたらすのか研究しています。また、今は医師の80%以上が漢方薬を処方する時代です。私は、いずれは患者様が治療法を選択する際の指針となる「漢方のエビデンス」の創出も行っていきたいと思っています。
学内にある「薬草園」。薬草や医薬品原料となるたくさんの植物が栽培され、教育と研究に活用されています
学生にとって漢方薬は、日常生活で接点が少なく理解しにくい。そう考えた城戸先生は、イメージしやすいようにイラストを用意したり、自身が現場で体験した実例を紹介したりと「心に残る授業」を行っている。さらにゼミでは、テーマのポイントを伝え、学生個人の考えややり方を尊重するスタイル。「身につけてほしいのは、自分で考える力。薬剤師は処方箋通りに薬を出すことだけが仕事ではありません。限られた情報から患者様の症状を正確に察知し、薬剤師としての役割を理解できる人になってほしいですね」と思いを語った。
研究室には学生一人ひとりの机を配置。考える力を伸ばすため丁寧に質問に答え、漢方薬や生薬の魅力を伝える
漢方は以前まで、大学卒業後に学ぶ分野でした。学生時代に漢方を深く学べる漢方薬学科は、業界からも求められる学科だと感じています。授業は少人数制ですから、同じ目標を持った仲間と高め合えるのも心強いですよ。
幅広い知識を活かし、地域住民への公開講座やオープンキャンパスでも活躍
専門分野:生薬学・漢方薬
生薬とは動物や植物、鉱物などの天然に存在する薬物のことで、医療で使用されている多くの薬も生薬から開発される。古くから漢方薬、伝承薬としても用いられている。
最終学歴:九州大学大学院薬学府創薬科学専攻博士後期課程修了。飯塚病院から漢方の処方箋を受付ける漢方を専門とした調剤薬局に勤務し、漢方専門の医師に学びながら多くの患者様と接し知識を深める。その後日本薬科大学勤務を経て現職に。
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