消防車の機関員を担当。町中の消火栓の位置は頭の中に
消防士としての私の任務は、いわゆる火消しと救急補助です。出動時以外は、主に訓練を行っていますが、消防士にとって、この訓練はとても大切な意味を持ちます。一口に火事と言っても、建物の種類や立地、風向き、時間等により、同じケースは存在しないため、いくつもの訓練を組合せて、起こりうるケースを可能な限り想像します。多角的な視点と洞察力を必要とし、なおかつそれで人の役にたてるという点において、大変やりがいのある仕事だと思いますね。一つ間違えれば大惨事になりかねない火事の現場で、いかに冷静に未然に事故を防げるか。経験と訓練を重ねることで、私も先輩方のような的確な判断力を身につけたいと思っています。
中学生の頃、まさに今私が勤務している吉川消防署に職場体験学習で訪れました。その際、煙の立ち込める部屋から人形を救い出すという訓練を体験したのですが、私だけ空気呼吸器の減りが極端に少なくて。理由は、装着が緩く、外気を多めに吸ってしまっていたわけですが、そのことで消防隊長にものすごい剣幕で怒鳴られたんです。さらに反省としてそのあたりを走らされて…。中学生の体験学習でなぜこんなに怒るのか、なぜこんなにも真剣なのか。そのことに逆に興味を抱いたのが、消防士をめざすきっかけとなりました。自分の身を守れなければ人も救えない。今思えば、命に関わる現場で働く重みを教えてもらった出来事です。
現場で臨機応変に動くには日々の訓練が大切
まだ消防士になって3年目ですが、もっと経験を積んだうえで、いつかは消防学校の初任教官になりたいと思っています。初任教官とは、入署してすぐの新人を教育する教官のこと。自分を指導してくれた教官との出会いから、そう考えるようになりました。教官の姿からは、仲間を信じ、自分を信じ、その上で仲間のために何ができるのかを考え実践する心を学ばせてもらいました。まだ、吉川消防署から初任教官になった人はいないため、この先どんなキャリアが必要か、どんな試練が待っているのかはわかりませんが、めざした道を信じて突き進み、多くの新人消防士に夢と誇りを与えられる存在になりたいと考えています。
仲間と支え合いながら、世の中の役に立ちたい
吉川松伏消防組合 吉川消防署 消防第2係/法学部法学科 スポーツと法コース(現:スポーツシステムコース)/2012年3月卒/大学を卒業後、6ヶ月間の消防学校への就学を経て、出身地である吉川市の吉川消防署に配属。3年目で消防車の機関員(運転、ポンプ操作を担当)を任されるようになった。消防士の仕事は、24時間勤務のあとに24時間休暇と変則的であり、一見ハードに思われるが「慣れてしまえば、長期の休みももらえるので、むしろ自由です」とのこと。大学では硬式野球部に所属。野球を通して培ったスポーツマインドは、今の仕事にも通じている。
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