人間は、目で見えるすべてのものの中から、その時々に必要な情報だけに注目して判断・行動しています。意識していないものは、ほとんど見えていないように感じることすらあるでしょう。同じことを、機械にできるようにする。見えている膨大なデータから必要なものだけを選択的に取り出す「画像情報処理技術」は、日進月歩の勢いで開発が進んでいます。
例えば、医療分野。医療の現場では、X線CTやMRI、マンモグラフィーなどのさまざまな画像診断装置を活用し、体内の情報を画像化しています。私は「数理形態学」と呼ばれる数学的理論を応用し、がんなどの病気特有の形状を3次元的に読み取る画像情報処理技術の研究に取り組んでいます。実用化されれば、人の目では分かりにくい極めて小さながんの発見など、より正確な医療診断につなげられます。
未来に期待されるAIによる画像診断。AIが効果的に学習するための画像情報の抽出にも、この技術が役立ちます
木森先生のゼミでは、画像情報処理・解析の知識と技術を探究するとともに、研究対象となる分野の知識修得も視野に入れた指導を行っています。自主性を育む研究環境も特色の一つで、学生は自分の興味がある分野(例:都市の成り立ちや歴史)など、さまざまな切り口から研究を深めています。
社会で求められる人間に成長するため、困難な課題に直面した際に物事を論理的に考えたり、文書作成やプレゼンの技法を磨いたりすることができる場も用意。研究者が集まる専門の学会で学生が発表することもあるそうです。
卒業研究発表会に向け、木森先生の指導を受けながら、プレゼンの練習に励む学生
社会的な課題には、既存の技術だけで解決できないものがたくさんあります。新技術が求められますが、開発に至る試行錯誤の時間は、かえがたい経験になるでしょう。トンネルを抜けた時には大きな喜びが待っています。
自然の中にある形や体をつくるタンパク質への興味が、研究者の道を歩む第一歩になりました
専門分野:数理形態学、バイオイメージ・インフォマティクス、AI技術を用いた画像認識、医用画像処理
略歴:九州工業大学情報工学部生物システム工学科卒業、同大学大学院情報工学研究科情報科学専攻を修了。博士(情報工学)。東京大学医科学研究所産学官連携研究員、自然科学研究機構新分野創成センターの特任助教などを経て、2018年4月に福井工業大学の准教授に就任。
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