私の主な取り組みは2つです。1つ目は学部から博士課程、現在に至るまで一貫したテーマ「痛み」。慢性的な痛みの8割以上は原因不明といわれますが、心理社会学的要因が影響することがわかっています。心理的支援が痛みの改善に大きく貢献できる可能性があるわけです。そこで理学療法士と連携し、認知行動療法の発想を用いた体と心の両面から痛みに迫るプログラムの開発とその効果検証を進めています。2つ目は生体腎移植手術を受ける患者さんと腎臓を提供する方のメンタルヘルスの向上。手術前に双方のメンタルヘルスチェックを行ってリスクを評価、医師や看護師へフィードバックするほか、心理面の変化を調査し支援体制構築をめざしています。これらの取り組みを通して、チーム医療の現場で私たち心理専門職への期待が高まっていることを実感しています。
オープンキャンパスでは研究を端的にまとめたポスターを掲示し、高校生にも興味をもってもらいました
自ら「大学のゼミで研究の面白さに出会った」という本谷先生のゼミ生も、「推測ではなく根拠をもって、人の心を科学的に考えていく面白さ」を見つけています。臨床的な意義を重視し、3年次には認知行動療法や心身医学の論文を読み、ホットなトピックスに触れ、ディスカッションでアイデアや発想を共有。科学的思考の基盤を身につけたところで、4年次に関心に合わせて研究テーマを決め、調査や実験、文献など、それぞれの方法で卒業論文をまとめます。脳計測装置NIRSを使って心理現象の解明に脳科学的アプローチを試みることも。
NIRS(ニルス)は、体への害がない微弱な近赤外光を利用して大脳皮質活動を計測・画像化します
地域社会・医療への貢献と世界に発信する研究の両立が可能な分野です。興味・関心・ふとした疑問が何よりの原動力。臨床と研究を両輪に、いまだ謎の多いこころの世界を学び、新たな道を共に切り開いていきましょう。
学生や大学院生が臨床現場を肌で知る機会をできるだけ多くつくることにも力を注いでいます
北海道医療大学心理科学部1期生。同大学院心理科学研究科博士課程修了。大学で「Scientist & Practitioner(科学者実践家)」の姿勢に感銘を受けたことが臨床家であり研究者であるスタンスの原点。福島県立医科大学勤務中、自身の大学院修了式の日に東日本大震災が発生、以後被災者支援にもあたる。被災地での活動が落ち着いた2016年、母校・北海道医療大学着任、現在に至る。
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