大卒者の3割が就職後3年で辞めてしまうのはなぜ?

就職活動をしてせっかく入った会社を3年経たずに辞めてしまう若手が3割──。

 

大卒者の3年以内離職率が3割を超えたのは90年代半ばのことで、それ以来、多少の増減はあるものの、同じような水準が今も続いている。この間には景気がいい時期も悪い時期も含まれているのだが、それでも3割という水準が大幅に変わらないのはなぜだろう?

 

「景気がいいときは、ほかにもっといい仕事があるのではないかという動機で辞めていく若手が多かった。では、不況時に厳しい就職活動を経て入社したのに3年以内で辞めてしまう若手がなぜ多いかというと、こちらは会社側の要因が大きいですね。経営環境の悪化で、若手の労働環境が厳しくなっているのです」(日本能率協会総合研究所/広田薫さん)

 

注目したいのが、この10月に厚生労働省が初めて公表した産業別の離職率。大卒3年以内の離職率が高いのは、「教育、学習支援」(48.8%)、「宿泊、飲食」(48.5%)、「生活関連サービス・娯楽」(45.0%)、「医療、福祉」(38.6%)。一方で、離職率が低いのは「電気・ガス・熱供給・水道」(7.4%)、「製造」(15.6%)、「金融・保険」(18.9%)など。

 

産業別大卒者の3年以内離職率

 

「日本は長らく製造業が雇用の受け皿になっていました。製造業は人を育てる体質があり、現在でも離職率は低い。しかし、不況の影響で製造業の雇用が減少し、それが、労働環境が厳しい飲食、サービス、医療・福祉などの業種に流れたことも、全体の離職率を押し上げる要因になっています」(広田さん)

 

もちろん、今の時代、会社を辞めることが一概に問題だとはいえない。ただし、3年以内で辞めた場合、転職市場で経験者として評価してもらえず、不利になるというリスクがあることも広田さんは指摘する。就職活動時に一生働き続けられる会社に出会うことは難しくても、最低3年以上はやりがいをもって働くことができる会社を選ぶこと。これが不況時の就職活動ではポイントになりそうだ。

 

出典:厚生労働省「新規学卒者の事業所規模別・産業別離職状況」