農学部志望者が年々増加中。女子にも人気のその理由とは?

●吉備国際大学、龍谷大学などが学部を新設

 
ここ最近、大学の農学系学部への注目度が高まっている。

 

新設や施設拡充などの動きも目立っており、明治大学は2012年、神奈川県川崎市に約12万8000平方メートルの敷地をもつ明治大学黒川農場を開設。

 

さらに岡山県の吉備国際大学は2013年4月に地域創成農学部を設置。2015年には龍谷大学が滋賀県の瀬田キャンパスに農学部を開設する予定だ。

 

農学系学部の志願者数も年々増えている。下に示したように、2008年度には5万人台だったが、その頃から増加傾向に転じ、2011年度には7万人を突破。2013年度には7万2000人を超えた。

 

<農学系学部の志願者数の推移>
2007年度  5万7218人
2008年度  5万6279人
2009年度  6万2598人
2010年度  6万5469人
2011年度  7万254人
2012年度  6万9721人
2013年度  7万2120人

出典/リクルート進学総研「入試実態調査」

 
 
●生命科学や食品など幅広いテーマが学べる

 
さて、そう聞いて「農業を目指す人がそんなに増えてるの?」と思った高校生もいるかもしれない。しかし、今や農学系学部で学べる内容は農業だけではないのだ。

 

なかでも人気の高い領域の一つが生命科学(バイオサイエンス)。生命科学は理工学系の学部・学科でも学べるが、農学系でも、品種改良、作物や家畜など動植物病理につながる生命科学は、理工系とは異質な、しかし重要な学問の一つとなっている。

 

また、食品や栄養について学べる学科も増えており、食の安全や健康への関心が高まっているなか、こちらも注目されている。

 

このほか、東北震災での農地の復興再生など農業生産にかかわる環境保全や食品流通、世界の食糧問題なども農学の領域。さらに、園芸療法などが学べるバイオセラピー学科、食品や化粧品の香りを研究する食品香粧学科といったユニークな学科も登場している(いずれも東京農業大学)。つまり、植物や食品に関する非常に幅広いテーマを学べるのが今どきの農学系学部なのだ。

 
 
●農業をやりたい!という学生も増えている
 

「農業大学、農学部というと農家の後継者が農業を学ぶ大学というイメージをもたれがちなのですが、東京農業大学に関していえば、現在、該当する学生は5%程度。もちろん後継者育成も重要な役割ですが、すでに20年前から多彩な学生が数多く学ぶ分野になっています」(東京農業大学 戦略室 上田勉さん)

 

さらに、女子人気が高いのも最近の傾向の一つ。食品・栄養系の分野があることも一因だが、それだけではないようだ。例えば、東京農業大学の女子学生比率は農学部や応用生物科学部などを含む全学部トータルで40%に達するという。

 

「本学に関していうと、ここ10年ほどは生命科学や食品関連の分野の人気が確かに高く、その流れのなかで女子学生も増えてきました。ただし、ここ数年は新しい傾向も生まれています。男女関係なく純粋に農業をやりたいという学生が実は増えているんです」

 

農業関連のほか、医療、食品、さらには流通・販売などさまざまな業界への就職に強いのも農学系学部の魅力の一つ。農業に興味がある高校生はもちろん、今まで農学部は候補に入れていなかったという高校生も、一度農学系学部をチェックしてみる価値はありそうだ。