ここ20年ほど、豪雨による水災害の調査とその対策や、治水上の要ともいえる河川堤防の安全性診断について研究しています。近年の激甚化する自然災害により注目されているこの「防災」という分野において、最も大切なことは「人の命を守る」こと。被災現場に自ら赴き調査したその成果は「防災ワークショップ」を開催するなどして市民の方々に伝えています。ただし、この「防災」という分野は、市民、県や市町村といった行政機関、民間企業、専門家、そしてなにより、市民の方々と連携・協働しなければ成し得ない取り組みです。そのため、立場や意見の異なる人々が、それらの違いを乗り越え、互いに理解し合いながら団結して「安全で、安心して暮らせるまちづくり」をするための研究開発を進めています。「災害被害者をゼロにする」これが究極の目標です。
堤防決壊による大規模水害発生時の航空写真。様々な資料を用いて災害のメカニズムやその対策を検討します。
土木工学において「水」について学ぶ基礎科目を「水理学」といいます。一般的な水理学では多くの数式がでてきます。これらの数式を、最も早く、最も正確に理解する最適な方法が、実験で実際に自分の目で見て、自分の手で触って「手触り」を確かめることです。このため、私が担当する水理学の講義では毎回、興味深い水の振る舞いについての実験をします。加えて全国に先がけて「最先端の水害シミュレーション技術」を講義に取り入れます。これにより基礎から応用まで身に付けることができ、卒業後に様々な職場で活躍できるようになります。
ダムが決壊した際のコンピューターシミュレーション。最先端のハイレベルな技術が学べる
我々は今、防災・減災研究に絶対的な「正解」を見い出せていません。その状況を打破するヒントは「やわらかい発想力」であり、その原点は疑問を抱くことです。どうぞ「自分が感じている疑問」を大事にしてください。
「土木工学科では、自分自身の頭で考え、そこに挑み続けることができる人材を育成していきます」
熊本大学大学院自然科学研究科博士課程修了後、群馬大学大学院助教を経て、2022年静岡理工科大学理工学部土木工学科の教授(学科長)に就任
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